2019年04月02日

本当の締切

 かつて、雑誌に寄稿する人がよく「本当の締切」という言葉を使う人がいました。
 これは、編集者から提示された締切日に原稿が上がらなくても、その数日後に設定された「本当の締切」に間に合えば原稿は掲載される、ということでした。
 自分も四半世紀前くらいにちょっと雑誌の編集をやった事がありました。
 確かに、その「本当の締切」というのは存在しました。ただし、ならば「本当の締切」までに原稿を上げればいい、というのは間違いなのです。

 本来の締切日までに原稿を上げれば、事実誤認や表記ミスなどのチェックもきちんと入ります。さらに、原稿の良さを可能な限り引き出すレイアウトを行い、写真や図表もそれにあったものを追加できます。
 しかし、「本当の締切」に入稿された原稿だと、そのような事をする時間がありません。
 その結果、ミスがそのまま掲載される危険性も高まり、レイアウトや写真・図表も雑になるわけです。結果的に記事の質が下がります。
 その結果、同じ原稿でも、本来の締切を守った記事より、質が落ちるわけです。
 約束を守らず、「本当の締切」に頼っていた人が、この「真実」を知ったらどう思うのだろうか、とよく考えたものでした。
 いずれにせよ、当時も今も変わらない結論は、「約束の時間以内にきちんと終わらせるのがいい仕事で、それを守らずにダラダラやるのは、いくら時間をかけてもだめな仕事」ということです。

  2019年04月02日 23:52