2019年02月22日

値引きの代償

 自営業をやっていたとき、たまに値引き交渉をしてくる人がいました。
 店によっては、意図的に本来の定価より高い売値を表示し、客が「まけてくれ」と言うと、「勉強しまっせ」などと「交渉」に応じて、本来の定価まで「値引き」して販売する、という手法をとっているところもあります。
 しかし、そのような例外を除けば、適切な価格を提示し、また実際にその価格で商品やサービスを提供しているわけです。もちろん、自分もそうでした。
 したがって、「この値段に下げてくれないと仕事を頼まない」などと交渉されると非常に困るわけです。
 何しろ、値引きをした金額で、定価に相当する仕事をしたら、利益は出ません。さらに、同じ商品やサービスを定価で購入してくれた人に対して失礼です。
 その結果、値引きした分、質を下げざるを得なくなります。
 たとえば、パソコンの初期設定を依頼された場合、希望する人には、起動時のパスワード入力を省略するサービスをしていました。しかし、値引きした相手には、その設定は行わない、といった具合です。
 不思議な事に、値引きをした側の人のほとんどは、「値引き後のサービスも、定価のサービスと同じ内容だ」と勝手に思い込んでいるようです。
 その結果、値引き交渉を続け、質の落ちた商品やサービスを買い続けるという、「安物買いの銭失い」状態に陥っている事に気づかないわけです。
 電車の運賃で、1,000円かかるところ、「値引きしてよ」などと言って500円しか払わなかったら、500円分の区間しか乗れません。他の商取引においても、基本的には同じなことが、なぜ分からないのか不思議です。

2019年02月22日 19:18