2018年06月28日

事実と事実の間に虚偽を混ぜる技術

 しばらく前に、ツイッターで、ヨーロッパの地図に日本を重ね合わせ、「この地図を見せたら非常に驚いていたんだが、もしかしたら日本の大きさを知らない人って意外と多いのか…日本はねでっけぇんだよ。メルカトル図法に騙されている事を学校でもきちんと教えてくれ… 」という投稿があり、多くの人がリツイートしていました。
 その図では、稚内がデンマークのコペンハーゲンあたりにあり、鹿児島がバルセロナと同緯度あたりに描かれていました。
 その図を見ても特に驚きはしませんでした。ただ一方で、「メルカトル図法に騙されている」という一文はかなり気になりました。

 メルカトル図法というのは、極地に近ければ近いほど、すなわち経度が高ければ高いほど、実際より面積が広く描かれてしまう、というものです。
 その結果、実際はオーストラリア大陸のほうがグリーンランド島より3倍以上大きいのに、グリーンランド島のほうが広く見えてしまう、という欠点があります。
 しかし、これはあくまでも極地近くでおきる現象です。実際、メルカトル図法における世界地図で、日本を真横にずらしてヨーロッパにあてはめると、稚内がだいたいイタリアの北端で、鹿児島がジブラルタル海峡よりちょっと南のモロッコになります。
 ツイッターで広まった図と比べ、日本が狭いようには見えません。いくらメルカトル図法とは言え、緯度が10度くらい違っても、さほど面積の歪みは生じないのです。
 書いた人もそのくらい分かっているでしょう。にも関わらず、なぜこのような書き方をしたのでしょうか。

 日本をヨーロッパにあてはめると、イタリアの北端より稚内が北で、スペインの南端より鹿児島が南(ちょっとずらせば、コペンハーゲンが稚内だとすると、鹿児島がスペイン北部くらい)、というのは厳然たる事実です。
 同時に、メルカトル図法だと、緯度が上になると、実際に面積より広く見えてしまう、というのもまた事実です。
 しかしながら、メルカトル図法のせいで、日本がヨーロッパより狭く見える、というのは、事実ではありません。
 しかし、漠然と「日本は西欧よりずっと狭い」と思い込んでいた人が、その画像を見せられたら、事実でない部分も信じてしまう事でしょう。実際、この投稿が多くリツイートされていることからも、それがわかります。

 現在、さまざまな形で、人を騙す手法が開発されています。この投稿もその一環なのかも、などと思ってしまいました。
 これが進めば、多くの人が、「民主的」に、自分たちが不幸になる手段を選んでしまう、という危機が近づいてしまいます。
 それを防ぐためにも、なんとかこの嘘が拡散される風潮を変えねば、と強く思っています。

2018年06月28日 23:59