2017年02月03日

美談めいた言説

 よく、SNSに「感動的なお話」が流れてきます。
 定期的に流れてくるものの一つに、「就職面接に来た大学生が、トイレ掃除の女性をバカにしたら、そこにその会社の社長が現れる。そして学生たちを批判し、『これから面接だね。楽しみにしているよ』と言って去っていく。学生たちは、自分達の愚かさを後悔する」という話があります。
 これから面接における会話で、いかにいい評価をうけようかと緊張している状態で、たまたま出会ったトイレ掃除の人に暴言を言う学生がいる、という事自体、普通考えられません。というわけで、この類の話が拡散されるのを見るたびに、「少しは実話かどうか考えてから拡散ボタンを押せばいいのに…」と思っています。
 まあ、「弱者をいじめる生意気な若造が、権力者の前に懲らしめられる」という水戸黄門的展開が、読んだ人に爽快感を与えるのでしょうが…。
 しかしながら、この話での社長の行動は本当に適切なのでしょうか。まだ社会経験もない学生の過ちです。人生の先輩として、理を持って職業に貴賎がない事を諭すべきではないでしょうか。
 それをせず、こんな所で社長の権威を振りかざして威張っているわけです。率直に言って、この逸話だけ見ても、この会社ではパワハラが横行しているのでは、と想像できてしまいます。
 そういう事もあり、作り話ではありますが、ここで悪役として登場した「学生」に対しては、職業の貴賎に対する誤認識を正せたうえに、こんなワンマンな会社に入らずにすんで幸運だったよな、と思っています。

2017年02月03日 18:10