2016年10月07日

遺族感情と死刑の関連性

 よく死刑存続を主張している人の論拠に「被害者遺族の感情を考えると死刑は必要」というのがあります。
 一見、もっともそうに見えますが、よく考えるとかなりの問題があります。
 戦後だけ見ても、日本には冤罪であるにも関わらず、死刑判決が出た事件が多数あります。死刑判決を受けた五人がいずれも無罪になった松川事件をはじめ、免田事件・財田川事件などが有名です。
 また、判決が確定していないものの、もはや死刑判決を受けた人が冤罪であることが間違いない、袴田事件などがあります。

 しかしながら、これらの方々が無罪だったというのは今だから言える話です。当時の警察からの報告や報道を見ていた遺族の方は、死刑判決を受けた方々が犯人だと思いこんでいた可能性が極めて高いでしょう。
 実際、これらの方々の無罪が確定したときの報道で、一部マスコミは、被害者遺族の「今でも犯人だと思っている」という談話を掲載したことがありました。
 つまり、冤罪を着せられた人の主張や反証など無視して死刑を執行していれば、「被害者遺族の感情」は満足したわけです。
 その「遺族の感情」を満足させるために、無実の人が死ぬという結果になったわけですが…。
 ここまで読めば、「被害者遺族の感情を考えれば死刑は必要」というのがいかにズレた考え方であるかがわかるのでは、と思います。

2016年10月07日 23:59