2015年12月16日

興ざめした「応援中継」

 クラブW杯準決勝の、南米王者リバープール対広島の中継を地上波で見ました。
 リバープールはこれが初戦で、一方の広島はここまで2試合勝ち上がっています。各大陸の力関係を見れば、このようなトーナメントになるのも仕方ないでしょう。
 自分のような素人でも、リバープールが勝ちそうだ、と思うところですが、中継は全然違いました。

 アナウンサーはもちろん、解説者も「広島頑張れ」「これは広島が有利になりそうだ」的な話ばかりです。これは「解説」でなく「願望」だと思いました。
 中盤、広島の選手がゴール前までボールを運ぶと、解説者の一人は「よしよし、いけいけ」などと言い出しました。そんな事、小学生でも言えます。そこで「このプレーのどこが良くて、今後どうなるか」を語るのが「解説」なはずなのですが…。

 また、リバープールのサポーターも多くつめかけていました。昨晩は道頓堀近くで大いに盛り上がったそうです。
 そのような情報を紹介するまでは非常に良かったのですが、途中から、アナウンサーは「サポーターが多いのもプレッシャーになる事もあります」などと言い始めました。
 興行を収益源としているプロスポーツの根底を覆すような珍説です。ならば、チームの勝利のために、サポーターはスタジアムに足を運ばないほうがいいのだろうか、と思いました。
 さらに、リバープールサポーターも、前半に比べると、声を出さずに、「黙って試合を見ている人が増えました」などとも言い始めました。しかしながら、カメラはその時のサポーター席には切り替わりませんでした。
 あと、前半終了後、「視聴者の勝敗予想投票の発表」がありました。その結果、広島勝利が75%あったとのことで、それを「喜ばしいこと」みたいに話していました。
 「願望」ならともかく「予想」でその結果、というのは、単に視聴者がサッカーをしらないだけ、だとしか言いようがないと思うのですが…。

 後半に入って、リバープールが先に選手交代をした時も、あたかもそれが不利と思っているあかし、であるような言い方をしました。サッカーのセオリーに、「不利を自覚しているチームが先に選手を替える」などというのがあったとは聞いたことがないのですが…。
 試合のほうは広島が健闘し、前半を0対0で終え、後半もその膠着状態が続きます。
 しかし、そのアナウンスと「解説」のおかげで、「いいぞ、広島、頑張れ」という気分になることはできませんでした。
 そして、後半25分くらいにアナウンサーは、「リバープールの監督の表情から焦りが見られます」と言い始めました。ここでも、カメラは監督の表情を映しません。
 そして、その直後、リバープールはセットプレーから見事に先制点を奪いました。おかげで、このアナウンサー氏が、試合中の監督の表情を読み取る能力が根本的に欠けている事が非常によく伝わりました。
 試合前は、広島びいきで見ていた自分ですが、これまでのひどいアナウンスと解説のおかげで、なんか自分のひいきチームが得点したような気分になってしまいました。

 結局そのまま、1対0でリバープールが順当に決勝進出を決めました。とはいえ、試合終了後も含め、リバープールのどこが良かったのか、などのアナウンスや解説はほとんどなかったのですが…。
 というわけで、広島が負けたにも関わらず、悔しさを一切感じる事はありませんでした。
 まさか、視聴者に悔しさを感じさせないために、意識してこのような「ひいき放送」をしたのだろうか、と一瞬思ってしまったほどでした。
 改めて、日本のマスコミの劣化が救いようのない域に達した事がよくわかった中継となりました。

2015年12月16日 22:24