2015年05月13日

直通運転すればいいものでもない

 ネットで直通運転が話題になっています。
 原因は、大阪で行われている「大阪市廃止投票」です。
 ちなみに、マスコミ等では「都構想」と呼ばれていますが、投票の結果がどうなろうと「大阪都」が誕生する事はありません。
 それはともかく、大阪市営地下鉄は、東京の地下鉄に比べて直通運転をしている路線が8路線中3路線です。
 それに対し、東京は都営地下鉄が4路線中3路線、東京メトロは9路線中7路線が直通運転しています。
 これを取り上げて、東京みたいに大阪市がなくなって府と市が一体化すれば、もっと直通運転が増える、と維新をはじめとする「大阪市廃止派」が宣伝しているわけです。
 しかしながら、大阪市がなくなっても直通運転は増えません。以前にも書いたようにほとんどの大阪市営地下鉄と、周辺を走る私鉄やJRとでは線路や集電装置の規格がぜんぜん違うので、もし直通運転をするならば、莫大な工事費が必要になるからです。

 したがって、大阪市がなくなったり、大阪市営地下鉄が府営や民営になったところで、直通運転が増える、などという事はありえません。
 これだけでも、「大阪府廃止派」の宣伝が話にならない事はわかります。
 そして、さらに言えば、「直通運転をすればいい」というものでもありません。
 たとえば、我が地元の京成電鉄は、都営浅草線と直通運転をしています。
 しかしながら、京成沿線と都内を行き来する人で、直通運転を利用しない人はむしろ多数派です。
 これは、京成と都営浅草線を結んだ路線が、非常に大回りで都内に向かうからです。
 その結果、船橋から京成線の直通特急で新橋に行くより、総武線各駅停車と山手線を乗り継いだほうが早く新橋に着く、という結果になっています。
 それもあって、千葉県東部から京成に乗り、船橋で総武線に乗り換える人は非常に多くいます。おかげで、かつて都内に通勤していた頃、振替乗車で京成に乗った時も、たいていは船橋で座れたほどでした。
 さらに、京成沿線から都内に出る場合、直通運転より日暮里で山手線に乗り換えたほうが早い、というケースも多々あります。
 このように考えれば、直通運転は簡単にできるものでもないし、できたからと言っても、できが悪ければ役に立たたない事も多々ある、というのが分かると思います。
 いずれにせよ、「直通運転が実現するから『改革』したほうがいい」という主張は、二重三重の意味で、信用に値しない、と言わざるをえないでしょう。

  2015年05月13日 23:37