2015年01月22日

今更「蒲蒲線」

 大田区が、2020年の五輪にあわせて「蒲蒲線」を開業させる、という方針を発表したそうです。
 変わった名前の路線ですが、これは、800mほど離れている、東急の蒲田駅と、京急蒲田駅を結ぶ、という路線です。
 それにより、東急の池上線や多摩川線から京急空港線に乗り入れ、大田区中央部や世田谷区から羽田空港に行く時間を短縮する、という路線を造るのが目的だそうです。

 しかし、そのためには障害が山ほどあります。
 まず、新線の終点となる京急蒲田駅は2階・3階にホームがある高架駅です。
 しかしながら、住宅が密集している蒲田において、そこに乗り入れる高架線を、東急蒲田駅から造るわけにはいきません。
 したがって、直通運転をするには、東急蒲田駅を地下化した上に、地下で京急蒲田まででなく、そこから空港線に並走する地下線を建設し、空港線が地下に潜る場所まで線路を引く、という計画になってしまっています。
 さらに、東急と京急では線路の幅が違います。そこで、「フリーゲージトレイン」という、日本では実用化されていない、異なる線路の幅に対応した車両でないと羽田空港までの直通運転はできません。
 つまり、一部は既存路線と重複するという効率の悪い地下鉄道を莫大な金をかけて造った上に、専用の車両まで用意しなければならないのです。

 この計画が出来たのは、1987年という、バブル華やかなりし頃でした。
 さらに当時の京急蒲田駅のホームは地上1階にありました。
 そのため、「なんか全国で色々と大規模な工事計画があるな。ならついでに、蒲田と京急蒲田の間にも鉄道くらい引けるだろう」程度の軽い気持ちで計画を立てたのではないでしょうか。
 もちろん、その後もバブル崩壊で、この話は実質立ち消えになりました。もし、この計画が具体的な形で残っていたら、京急蒲田駅の立体化は高架でなく、地下化で実現していたことでしょう。

 そのような、もはや完全に忘れ去られた「新線構想」を、なぜ発表したのか、と思いました。
 2020年の五輪にあわせてのどさくさ紛れ、という事なのでしょうか。
 大田区の財政事情などはよく知らないのですが、そんな大して需要もないにも関わらず、経費ばかり山ほどかかる「蒲蒲線」を造るより、もっとすべきことが山ほどあるのでは、と思わざるを得ませんでした。

2015年01月22日 23:18