2012年12月05日

親切

 健康診断のため、幕張にある病院に行きました。この病院は、駅・バス停からかなり離れた所にあります。そのため、幕張駅を始め、近隣の各駅に送迎マイクロバスを運行しています。
 幕張駅からそのバスに乗って病院に向かいました。次の停留所で一人の患者さんを乗せます。次に停まるのは、終点である病院です。
 そこに向かう途中、前方にマスクをした、小学生くらいの女の子とその母親とおぼしく二人が歩いていました。
 すると、すると、運転手さんは車を止め、窓を明けて、「病院に行くのですか?」と声をかけました。そして、母娘がうなずくと、ドアを明けて二人を乗せました。

 仮に、無視して通り過ぎても、その母娘は自分たちが無視された事すら気づかなかったでしょう。また、この行為によって、この病院が利益を上げたり、運転手さんの給料が上がることもないでしょう。
 したがって、何一つ「得」にはならない事ですが、その運転手さんは、わざわざ停留所でない所に車を止め、母娘を乗せたわけです。
 他の乗客も感心し、降りる際に、「親切な運転手さんですね」と声をかけていました。
 自分も感心したのですが、同時にしばらくぶりに「親切」という言葉を聞いたな、と思いました。

 とにかく世知辛い世の中です。新聞やTVで持て囃される人は、「敵」の事を口汚い言葉で罵ったり、弱い立場の人に上から目線で冷酷な言葉をかけたり、自分が利益を得れば力の無いやつなどどうなってもいい、それは「自己責任」だ、などと言う人ばかりです。
 一方、何の見返りもなく、他人に親切にする人が取り上げられるなどという事はありません。そんな風潮ゆえに、「親切」という言葉を聞く機会が減ったのかもしれません。
 いずれにせよ、その運転手さんも、それを褒めた乗客の言葉にも、温かさと懐かしさを感じました。
 同時に、その「親切」に珍しさや懐かしさを感じないような風潮に戻ってほしいものだ、とも思いました。

2012年12月05日 22:35