2012年09月07日

裸の王様と現代日本

 「裸の王様」という有名な寓話があります。この話では、王様に「愚か者には見えない服」を売る連中が詐欺師であることが冒頭で明かされます。そのため、読者は皆、「犯人」が分かっている状況で話を読み進めます。
 そのため、裸で行進する王様や、それを褒め称える臣民たちを滑稽に思い、「王様は裸だ!」と叫ぶ少年を自分に重ねます。
 その一方で、現実世界において少なからぬ人が、「王様」や「臣民」の立場で行動をします。
 8年ほど前、テレビなどでヒーローみたいに扱われた総理大臣の主張は、「痛みを伴う改革」でした。氏の発言において、「痛み」を与えられるのは一般市民であることは明示されていましたが、「改革の恩恵」を受けるのが一般市民であるなどとは一言も言っていませんでした。
 実際、氏の発言通り、一般市民は「痛み」だけを受け、一部の人だけが「改革の恩恵」を受ける結果になりました。
 要は、その首相を支持した人たちは、裸の王様の「服」を褒め称えるのと同レベルだったわけです。
 にも関わらず、生活が悪くなったにも関わらず、殆どの人が自分がその首相を支持した事が間違いだったという事にいまだに気づいていません。それどころか、その息子の議員を応援したりしています。

 「裸の王様」を読めば、嘘に踊らされる人を滑稽に思うくせに、自分たちはその人達と同じ事をやっているわけです。
 そして、その首相が引退したあとも、「政権交代」だの「決められる政治」などという、詐欺師が用意した新たな言葉に踊らされ続けている人が沢山います。
 このような傾向が続く限り、日本の「裸の王様」状態は半永久的に続くのだろうな、と暗澹たる気分になりました。

2012年09月07日 23:53