2012年02月07日

「三匹の仔豚」の視点

 有名な童話に「三匹の仔豚」というものがあります。子供の頃、この話を読んだ時、当然のように豚の視点で読み進め、最後に煉瓦の家に住んでいる豚が勝利したときは喜んだ記憶があります。
 これはどこの家庭でもそうでしょう。そして、母親が子供に読み聞かせた後に、「というわけで、三番目の豚は助かりました。めでたしめでたし。では夕食にしましょう。今日は豚の生姜焼きよ」などという会話があっても、親子とも違和感をおぼえないでしょう。
 しかし、よく考えてみると、我々は日頃から豚肉を食べています。そう考えると、肉食否定主義の方を除けば、狼の視点でこの物語を読むのが、人間として自然なのではなかろうか、とふと思いました。
 たとえば、子供が「煉瓦の家は丈夫だから狼さんも吹き飛ばせなかったんだね」などと感想を述べたら、親は「うん。しょせん狼は道具を使えなからね。これが人間だったら、ハンマーで扉を叩き破って煉瓦の家に入り、仔豚を捕らえて食べちゃうんだけどね」と説明するのが正しいのではないでしょうか。これなら、その後の夕食に豚肉を出しても不自然ではありません。

 もちろん、これは童話に限った事ではありません。少なからぬ人が、情報に接する時、ついつい書き手が用意した視点でその情報を見てしまいます。
 その結果、自分にとって不利な結果を及ぼすのが明らかな考えであるにも関わらず、書き手の視点で判断してしまい、賛同してしまう、という事が多々あります。
 情報を読んで、それを自分の考えに取り込む前に、その発信元の視点と自分の視点が本当にあっているのかを考えないと、そのような結果になるわけです。
 豚が食べられずに済んだことを喜びつつ、豚肉を食べた、かつての自分を振り返りつつ、そのような事を考えました。

2012年02月07日 19:48