2011年10月05日

えらく税金を使うマニュフェスト

[ 交通 ]

 大阪市長に立候補する人が「マニュフェスト」を発表したそうです。私は大阪市に住んだ事はないので、そこに書かれている政策の実現性について、詳細はよくわかりません。しかしながら、市営地下鉄に関する部分は、元鉄道ファンのはしくれとして、衝撃的なものでした。
 「公約」は二つあります。一つは「他鉄道との乗り入れを増やす」で、もう一つは「民営化」でした。
 確かに、都営と東京メトロをあわせると12路線中9路線が直通運転をしている東京に対し、大阪市営地下鉄は8路線中3路線しか行なっていません。しかしながら、これは政治がどうこう、という話ではありません。単に、大阪市営地下鉄は、阪急との直通を前提に建設された堺筋線を除けば、周囲の私鉄・JRと全く違う規格で造られているから、というだけの話です。
 ちなみに、他に直通運転をしている御堂筋線と中央線は、乗り入れ先の鉄道が、大阪市営地下鉄の規格にあわせて建設されているので、直通運転が可能となっています。
 したがって、「マニュフェスト」にある直通運転の拡大を実現するには、市営地下鉄か、乗り入れ先の鉄道のどちらかの規格を変えるよりありません。いくら「マニュフェスト」にあったからと言って、自費で規格を変える鉄道会社はないでしょう。したがって、実現させるには、巨額の税金を使って、市営地下鉄の規格を変えるよりありません。その変更内容は、全架線のつけかえと、全車両の改造になります。
 しかしながら、もう一つの「マニュフェスト」により、市営地下鉄は「民営化」されるため、その税金による投資が市民に還元される事はありません。なお、「民営化により運賃値下げ」などとうたっていますが、少なくとも鉄道において、そのような事例はありません。1980年代に国鉄がJRに売却されても値下げなどありませんでした。さらに、同時期に国鉄から第三セクターに売却された場合は、いずれも値上げになっています。
 関西に一年ちょっとしか住んだ事がない元鉄道ファンですら簡単にわかる「できもしない事」が、「マニュフェスト」に堂々と載っているわけです。最初から騙す気満々である事は明らかです。
 しかしながら、この候補者およびその人が率いる地域政党は高支持率だそうです。このような現状を見ていると、「振り込め詐欺」が話題になりだした頃によく言われた「大阪では振り込め詐欺にひっかかる人は少ない」というのは現実からかけ離れた都市伝説の類だったのでは、とまで思えてきてしまいました。

2011年10月05日 23:43