2011年08月05日

劣化?

 ある大学の先生がネット上の発言の劣化についてというブログを書いていました。その、書き出しは個人的印象だが、ネット上での匿名発言の劣化がさらに進んでいるように見える。となっています。
 匿名掲示板は、10年以上前に初めて見た時に、あまりの異常さに辟易し、その後もほとんど見ていません。したがって、「劣化」しているかどうかは自分には判断できません。
 したがって、この文の主張が正しいかどうかは判断できません。ただ、読んでいて、非常に気になったことがありました。
 その主張によると、紅白歌合戦の視聴率が80%で読売と朝日の部数合計が2,000万部を越えていた時代は、「情報のデモクラシー」の時代だった。 これはリアルタイムでその場に身を置いたものとしては、「たいへん楽しいもの」として回想される。だったとのことです。
 まあ、確かにその頃はネットはありませんした。したがって、著者が憂うるような「ネット上の発言の劣化」も起きるわけがありませんでした。
 しかし、その時代に人々が与えられる情報および、人々が発信する情報が今よりも良かったとは到底思えません。
 たとえば、「ロス疑惑」の時など、あらゆるマスコミが一斉に、結果的には無罪になった「疑惑の人」を殺人犯扱と断定するような論調で、連日あることないこと書いていました。他にも、今にして思えば明らかな間違いを、唯一の真理であるかのように流していた事例はいくらでもあります。
 一方、その受け手のほうも、今と比べて質が高かったとは思えません。たとえば、匿名掲示板の特徴の一つとして、「東アジアの他国民蔑視発言」があります。しかし、これはネットの時代になって出てきたものでもありません。
 当時、普通に暮らしていた人々の少なからぬ人も、当然のように彼らを差別する発言をしていました。その典型例としては、自動焦点カメラが普通に「バカチョンカメラ」などと呼ばれていた事があげられるでしょう。
 いずれにせよ、商業マスコミが情報発信を独占していた時代のほうが、やりとりされる情報の質が高かった、というのは無理がありすぎます。
 匿名掲示板の発言を批判する事自体はいいと思います。しかし、これでは下手すると逆効果になりかねない、とまで思った「批判」でした。

2011年08月05日 23:58