2011年05月17日

声も上がっている?

 新聞記事などで、よく「これについては国民の中には批判の声も上がっている」などという形で、報じる対象を批判している文章があります。
 確かに、そういう声が上がっているのは確かでしょう。なぜならば、ある事について、国民が一人残らず賛成もしくは反対する、などという事は現実的にはありえません。したがって、どんな事にでも「批判の声がも上がっている」のです。
 したがって確かに、嘘ではありません。しかし同時に、その「声も上がっている」という文言には何の意味もありません。なぜならば同じ記事のその部分を「これについて国民の中には賛成の声も上がっている」と書き換えても、それまた事実であるからです。
 つまり「上がっている声」というのは、書いている記者や、所属している新聞社の意見でしかないのです。しかし、建前上、記事は「客観的」であるという事になっています。そのため、「記者はこう考えている」というのは社説や主張記事でない限り書けません。そこで、「声」に本音を込めながら、「客観的記事」を装っているわけです。
 もちろん、どんな書き方をしようと完全に客観的な記事など存在しえません。ただ、その中でも特に「声も上がっている」という文言があるものは、特に著しく客観性に欠ける記事である、と思っています。

2011年05月17日 23:56