2010年07月08日

「世界一短い手紙」の謎

 小説「レ・ミゼラブル」の著者のヴィクトル=ユゴーが売れ行きを出版社に尋ねた際に、「?」とだけ書かれた手紙を送り、それに対し、好評であることを伝えるために担当者が「!」という返事を送った、という話があります。ともに一文字であることから「世界で最も短い手紙」などとも言われます。
 よく聞かれる話ですが、よく考えると色々と突っ込みどころがあります。仮に著者の期待に反して本が売れていなかったら編集者は「×」とでも返事したのでしょうか。さらに、可もなく不可もなく、という感じの平凡な売れ行きだったらどう返信したのでしょうか。

 だいたい、いくら仕事で組んでいる相手とはいえ、普通の人は唐突に「?」とだけ書かれた手紙を送ったりはしないでしょう。もちろん、普段から新刊を出すたびに「記号一文字」の手紙を送っていた、というなら話は別です。ただ、それでは「世界一短い手紙」が何通も存在することになってしまいますが・・・。
 というわけで、考えれば考えるほど、「本当にそんな手紙のやり取りはあったのか?」と思えてきます。ちなみに、フランスには「ヴィクトル=ユゴー記念館」があって、彼の手紙なども展示されているとのことです。しかしながら、「?」一文字の手紙の展示はないようです。
 まあ、これも一種の都市伝説みたいなものなのでしょうか。面白い話だとは思いますが、ちょっと冷静に考えると、かなり無理があるな、と思いました。

2010年07月08日 23:44