2012年06月15日

話題のずらし方

 4月末に、格安ツアーバスが交通事故を起こし、7人の方が犠牲になったのはまだ記憶に新しいところです。
 その後しばらくは、この事件に関するニュースはかなり多く報じられていました。ところが、ある時期から、話がずれてきました。
 まず、事故を起こした運転手が、運行を担当した会社の名義を利用して、違法な営業を行なっていた、という事が話題になりだしました。さらに、その会社も、その「犯罪」に関わっていた、という事で、その会社の社長も逮捕されました。それ以来、この事件の関連報道は見なくなりました。
 確かに、運転手が違法営業をし、契約していた会社がそれに噛んでいた事は良くない事です。しかしながら、それと、7人が亡くなった事故には何ら関係がありません。そしてこの大事故が発生した事に比べれば、まったくもってどうでもいい事です。
 それによって、そのような問題のある会社が長距離バス運行に参入できる、という制度の本質的な問題点はそのままとなってしまいました。
 7年前にJR西日本が福知山線で大事故を起こした時もそうでした。なぜかいつの間にか「100人以上の死者を出した人事管理および施設管理」よりも「その日の晩にJR西日本の一部社員が飲み会を行った事」のほうが大問題であるかのように、報道がずれていきました。
 そして結局、事故の根源的な問題は、遺族による裁判の時くらいしか取り上げられる事はなくなりました。
 その理由は、報道を行なっている会社が、事故の本質的な原因である「バスの規制緩和」「JRの『民営化』と同時に確立した安全軽視体制」を持ち上げていたからです。したがって、その事故の本質がどこにあるかが明らかになると、マスコミの報道がいかにおかしかったかも同時に明らかになってしまうわけです。
 それを防ぐために、このような「枝葉末節な事ばかり取り上げて、本質を隠す」という報道が行われるわけです。
 毎度の事ですが、その姑息さと無責任さには呆れてしまいました。

2012年06月15日 00:42