2012年01月30日

「敵」を倒し続ける「正義」

 人気のある娯楽作品の多くは、毎回、敵が現れてその都度その敵を倒します。「ウルトラマン」や「北斗の拳」は、毎週毎週どこからともなく敵が襲撃してきます。「仮面ライダー」や「戦隊ヒーロー」は毎年毎年新たな悪の組織が結成され、定期的に刺客を送りつけます。そして「水戸黄門」や「名探偵コナン」は、主人公が行く所全てに悪人がいて、陰謀を巡らせています。
 このような設定をしておけば、主人公の「正義」を描くのは簡単です。何しろ、残虐な「悪」を描き、それと闘う、という事だけで、「正義の味方」になれるからです。
 たとえば、ウルトラマンが毎週自然災害の対処をしたり、水戸黄門が毎週各地で農業技術改善の手助けをしていたら、いくらその能力が高くても、あれほどの人気シリーズにはならなかったと思われます。
 それくらい、「敵」を設定してそれを倒す、というのは自らの正当性を高め、支持を集めるには効率的かつ便利な手段です。
 それだけに、現実世界でもこの方法を用いる個人・組織は多々あります。
 その代表は、定期的に「テロ国家」を設定して軍事作戦を行なっているアメリカでしょう。また、政治の世界でも、そのような手法を取ると、マスコミがもてはやしてくれるため、簡単に人気者になれます。会社などの狭い組織でも、この手法を出世や勢力拡大の手段に使う人は少なからず存在します。
 ただ、現実世界では、毎年一回悪の組織が結成されたり、主人公の行く所に悪人が常駐している、などという事はありません。その結果、「悪と戦い続ける」ためには、常に周囲の誰かを「悪人」に設定しなければなりません。たとえ、その「敵」が有害でなくてもそうなってしまいます。
 こうなると本末転倒で、自称「正義の味方」が最も迷惑な存在になってしまいます。しかしながら、もはや「正義の味方」は「敵」との闘いを止める事ができません。「敵」がいなくなったとたん、自分の「正義」が崩壊してしまうからです。
 このような事は、歴史上いくらでも存在します。しかしながら、相変わらず、そのような形で「正義」を具現しようとする迷惑な人が尽きることはありません。
 このような「正義」を支持する人がいる限り、そのような「闘い」は際限なく続くでしょう。その結果、「敵」に設定された人が、不当な被害を受ける、という状況もなくなることもないのだろうな、と思いました。

2012年01月30日 23:52