2011年07月17日

理解不能の関連付け

 猛暑による熱中症が多発しているとのことです。それに対して、奇妙な主張をちょくちょく見ることがあります。その象徴が昨日、産経のサイトに載ったついに死者!!菅首相の思いつきで続出する3次被害という記事でしょう。
 いきなり、熱中症による死者のデータを掲載し、その原因を冷房の設定温度を上げたり、使用を極力自粛する傾向が強まったことが、こうした被害の拡大に拍車をかけた可能性がある。と「分析」しています。
 ここまではまあ、現象に対して、その原因を仮説として提示する、という普通の文章です。ところが、ここからとんでもない意味不明の展開が行われます。

 その「節電による熱中症の増加」が発生した原因として、東日本大震災は地震や津波による未曾有の1次被害とともに、福島原発周辺住民の避難に代表される多くの2次被害を生んだ。過剰な節電意識から生じた熱中症は、さしずめ「3次被害」と言ったところだろう。しかも、1次や2次被害と違って民主党政権、とりわけ菅政権と密接不可分な、正真正銘の人災でもある。
 さすがに、こうした事態は浜岡原発の停止要請以来、心の片隅にあったのだろう。首相は13日の記者会見で熱中症患者の急増について「本当に申し訳ないといいましょうか、静養いただかなければならない問題だ」と謝罪した。後ろめたさを感じていたとみえる。
となぜか急に菅首相が出てくるのです。
 「さすがに、こうした事態は浜岡原発の停止要請以来、心の片隅にあったのだろう。」などはまともな日本語にすらなっていません。それだけに全体的に極めて意味不明です。ただ、どうやら「節電意識は菅政権によって広められた。なぜならば、菅首相が浜岡原発の停止要請を行ったからだ」と言いたいのだと推測はできます。
 しかし、これは、こじつけとしか言いようがありません。もし、浜岡原発を止めた結果、電力供給が満足できなくなり、計画停電が発生した。そのため熱中症で人が死んだ、という経緯があるのなら、一応、菅首相の行動との因果関係が成立するのかもしれません。しかし、そのような事はありません。
 前提となっている仮説である「電力の消費を極力自粛する傾向が強まった」を生み出したのが電力会社である事は明らかです。震災直後に「計画停電」を行うなど、「電力不足」を大々的に宣伝しました。そして、「原発を止めると電力不足になる」と宣伝していたのはマスコミです。
 そして実際に異常に暑い夏になっていますが、現実問題として電力供給が止まってはいません。かつて計画停電をした東電などは、副社長が他社に電力融通検討などと言っている有様です。
 もし本当に、節電意識のために熱中症になった人がいたならば、「主犯」は電力会社であり、「共犯」はマスコミ各社となります。t確かに菅首相は就任以来、ろくでもない事ばかりやっています。しかし、この件においては氏の出る幕はありません。
 ギャグ漫画やラブコメで、主人公が自分の都合のいい事を考えているうちに、延々と妄想の世界に入ってしまう、という描写があります。そのような妄想世界をそのまま文章にした、という感じの「記事」でした。

2011年07月17日 23:54