2011年06月27日

知られざる功績

 3月の地震からずっと不思議に思っていた事がありました。それは、なぜ同じ東京湾の埋立地なのに、浦安市や千葉市美浜区が甚大な被害を受けて、葛西や台場などには液状化などがほとんど発生しなかったか、という事でした。
 実際、我が家の近くにあり、海まで歩いて20分くらいかかるような美浜区で、建物が居住不能になってテナントが全て出て行った商業施設を見ました。一方で、葛西の埋立地に住んでいる知人は、ほとんど何も被害はなかったとのことでした。
 ところが、先日、ある一級建築士の人にその疑問を尋ねたところ、間髪を入れずに答えがきました。それは、「行政の違いです」というものでした。
 埋立地の強度基準は、都道府県ごとに定めることが可能なのだそうです。そして、台場や葛西の埋立が行われた時の都知事は、その基準をかなり厳しく定めたそうです。一方、浦安や美浜を埋め立てる時の千葉県知事は甘い基準を定めたとのことでした。
 その結果が、東京と千葉における埋立地の被害の差になった、とその建築士は言っていました。
 その人が都知事だった頃、私はまだ子供でした。しかしながら、新聞を見たりして、その知事が福祉の増進に力を入れるなど、企業より住民を優先する政治を行っていた事は知っていました。しかしながら、新聞はその知事の事を「財政赤字を増やした」などとけなしていました。新聞社の広告スポンサーには受けが悪かったゆえなのでしょう。
 しかし、結果的にはその知事のおかげで、埋立地に済む都民は、あの大地震において生活を奪われずにすんだわけです。そう考えると、その知事は30年後の住民にまで恩恵を与えた大政治家だったと言えるでしょう。
 もっとも、当時からけなしていた商業マスコミが、そのような功績を伝える事は絶対にありません。一方で、商業マスコミ受けをする知事は、どんな愚政を行っても、褒められる続けるわけです。
 意外な所でその元知事の功績を知ると同時に、それが伝えられる事がない、という現実の異常さを考えさせられました。

2011年06月27日 22:24