2011年08月16日

わかりやすい「配慮」

 Yahoo!トップの「経済」タブに実態はヤミ金…カード現金化商法、規制は困難という読売新聞記事へのリンクがありました。
 用は、「客」にクレジットカードで買物させ、その商品を定価の8割くらいで「業者」が購入するというものです。「業者」は、「客」から買った価格と転売して売った価格の差が利益となります。一方、「客」は、「業者」の買取金で一時的に現金を得るものの、後からクレジットカード業者から定価の請求が来るため、その分が「利子がわり」になる、という構造です。
 記事には、クレジットカードの業界団体が「改正貸金業法が施行されて以来急増した」という「分析」を掲載しています。そして、リンク先であるYahoo!のページは「改正貸金業法」の特集ページとなっていました。
 しかし、本当に「カード化商法」と改正貸金業法に関連性があるのでしょうか。ちなみに、この「カード化」については、20年近く前に描かれた「ナニワ金融道」でも取り上げられています。別に、改正貸金業法施行に合わせて発生したものではありません。

 また、「この商法は改正貸金業法施行の影響で増加した」と主張するなら、法施行前と施行後の摘発件数の差異のような具体的なデータを提示する必要があるでしょう。そうでないと信用性はゼロになります。
 ちなみに、リンク先ページの下には、その「改正貸金業法」に関するリンク集があります。そして、そのほとんどは、「改正貸金業法施行によりヤミ金が増える」という「憶測記事」ばかりです。
 今年6月に金融庁は貸金業法改正で“ヤミ金利用者”減少 金融庁「制度見直し不要」という発表をしています。しかし、該当ページにはそれに関するリンクは一切存在しません。
 つまり、金融庁の発表を無視して、施行前の憶測記事や、クレジットカード会社協会の発表をそのまま載せた記事を掲載し、「改正貸金業法のせいで別の被害者が増えた」という世論誘導をしているわけです。

 なぜそのような事をするのか、という理由はそのページを見れば一目瞭然です。記事の下、さらには横にも、「ローン」の広告が載っています。詳細ページには全部で9つものリンクがありました。
 つまり、サラ金業者はYahoo!にとって重要なスポンサーなのです。したがって、彼らの利益にならない改正貸金業法を叩くようなページ構成になるのわけです。
 なお、記事には「カード現金化商法」の対策がないと書かれていましたが、これもかなりの疑問です。例えば、私が加入しているクレジットカードの一つは、有効期限が5年となっており、しかも5年後には一切審査などなく、新たなカードが送付されました。この期間を短くし、さらに更新時の審査を厳しくすれば、被害の件数は減るはずです。
 しかし、これを行えば、クレジットカード会社の利益も減ります。当然ながらそこから広告を貰っている新聞社やポータルサイトが、そのような「対策案」を提示するわけがありません。
 記事の信頼性は、本文だけでなく、周辺に記載する広告も含めて判断する必要がある事がよく分かりました。その観点において、この改正貸金業法批判の特集ページに貸金業者の広告が大量に載っている、というのは非常に分かりやすい「ページ構成」だと思いました。

2011年08月16日 22:26