2010年09月11日

社員を「歩」のように使う

 とある「労働組合様のための研修会、講演会の企画、講師コーディネート担当者のブログ」を読んでいたら、本田宗一郎氏は社員の心を掴むのが上手かった。将棋で言う「ふ」の使い方が上手だった。「ふ」は上手く使えば「金」になる。などという記述がありました。
 ちょっと気になって検索したところ、本田氏がその事について講演している動画がありました。そこには、引用された言葉に続いて、「しかも、金になった歩は、相手に取られたても、歩でしかない。(中略)これを上手く使う奴が名人だ」というと言っていました。

 将棋の理論としては当然のことです。しかし、これを「経営」だの「労働」だのに援用されるのは、働いている身としてはたまったものではありません。
 要は、「歩」というのは、よく働くうえに、いらなくなって捨てた時のリスクも低い、と言っているわけです。「心を掴まれた社員」ならば、「社畜」として喜んで捨てられるのかもしれません。しかし、そうでない人にとっては悲惨な話ですしかありません。
 こういう経営者に対して、かつては「社員を将棋の駒のよう扱う」という言葉がありました。しかし、将棋をやる人が減ったためか、「失われた20年」効果で社員をそのように酷使するのが普通になったせいか、最近ではこの言葉を見る機会も減っています。
 これが「労働組合向けの講演を斡旋する会社」のブログにあるのだから驚かされます。ろくに将棋を知らない担当者が知ったかぶりをしたためなのでしょうか。それとも、大手の労働組合がそういう体質なのでしょうか。どちらが原因にせよ、読んでいて頭が痛くなる一文でした。

2010年09月11日 19:22