2012年05月30日

身分制度

 子供の頃、親が買っていた「ブッダ」をよく読みました。この漫画は、ブッダが生まれる前に単行本二巻分の話があります。その内容は、奴隷階級にいながら武士階級に上がろうとし、身分がバレて殺された少年と、さらにその下の身分にいる少年が主人公で、当時の過酷な身分制度を主題としていました。
 いずれにせよ、その理不尽な身分制度により命まで奪われた人がいる、という事に驚き、「同じ人間なのに、昔はひどいことをしていたのだな」と思っていました。
 しかしながら、実はこれは昔話ではありませんでした。数日前から、芸能人の母親が生活保護を受けていたという事が大騒ぎになっています。別に、芸能人もその母親も何一つ不正は行なっていません。
 ところが、その当事者のみならず、生活保護を受給している全ての人まで「働かないで税金で暮らすくせにブランドバッグなどを買う怠け者」という扱いになり、テレビなどは、各局横並びで大バッシングをやっています。中には、「生活保護受給者の暮らしについて通報してほしい」と呼びかけた局まであったそうです。
 このあたり、「ブッダ」の世界で、身分の高い人々が、下層階級に対する態度と極めて似ていました。おそらく、マスコミという上層階級に所属する人々にとって、「生活保護受給者」という下層身分の人間がささやかな楽しみをする、などという事は許されざる事なのでしょう。
 ブッダの舞台は2,500年ほど前のインドです。その後、様々な形で人類は進歩しているはずです。しかしながら、一方で、当時と変わらない思考レベルを持つ人も残っているわけです。同じ人間として、かなり虚しいものを感じざるを得ませんでした。

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