2012年05月12日

新型うつ病

 最近、ちょくちょく「新型うつ病」という言葉を聞きます。なんでも、うつ病で仕事に行けなくても海外旅行に行ったり、休職してもそれを申し訳ないと思わず、会社や上司が悪いと言う、というのが主な特徴だそうです。
 いくつかこれに関する論調を見てみましたが、少なからぬ人が「最近の若い人に多い甘え」みたいな論評をしていました。
 しかしながら、本当に最近の若い社会人には「甘え」があるのでしょうか。少なくとも、就職活動の時から、バブル期に大学卒業をした世代の何十倍も苦労しているわけです。
 さらに、苦労してやっと入れた会社の環境は悪化する一方です。労働環境は悪化し、給料も安く抑えられ、パワハラが横行しています。
 その結果、仕事が起因でうつ病を患う人も大幅に増えました。きちんと調べた事はありませんが、20年前と比較すればケタ違いなのではないでしょうか。
 そんな中、「新型うつ病」の人は、仕事で生じた「うつ」にプライベートまで侵されていないわけです。ある意味、この病んだ企業社会において、せめて日常生活だけは正常に送れるという「免疫」をつけたようなものなのでは、と思いました。
 あと、会社や上司のせいにする、というのも至極当然だと思います。有名な居酒屋チェーンや洋服屋チェーンをなど、社員を低賃金・長時間労働でこき使って経営者ばかりが大金を得ている企業はたくさんあります。
 しかも、マスコミがそのような金の亡者を「優れた経営者」などともてはやすものですから、よその会社もマネをして、より労働環境は悪化する一方です。それを考えれば、会社や上司が悪い、というのは単に事実を指摘したに過ぎません。
 だいたい、「新型うつは甘えだ」などと言っている人は、彼らに何を求めているのでしょうか。「新型」の状態で休職などせず、「従来型うつ」になるまで、さらに苦しめ、とでも言いたいのでしょうか。
 そもそも、新型だろうが従来型だろうが、仕事が原因で精神を病む人が出るような労働環境自体が異常なのです。それを、被害者の苦しみ方の度合いで「甘え」などと言うのは、完全に筋違いでしょう。
 いずれにせよ、そのような「甘え」論者が大勢を占め続けている限り、日本経済の将来は暗いままだろうな、と思いました。

2012年05月12日 23:17