2009年07月15日

十六分の一に圧縮された漫画

[ 漫画 ]

 少年サンデー1983という雑誌が発売されました。題名の通り、1983年の週刊少年サンデーに連載されていた漫画を再録しています。それに加え、作者のインタビューや対談も掲載されています。
 載っているのは少年漫画ですが、対象は当然ながら30台後半から40台なわけです。そういう富裕層(?)相手なのか、ほとんど再録で236頁にも関わらず、630円という値段設定でした。
 最初宣伝を見たときは、「ちょうど自分が初めてサンデーを買ったのは1983年だったな。だからと言って買う気は起きないな」と思っていました。しかし、よく見ると当時の人気漫画とともに、安永航一郎先生のうで立て一代男が再録される、と書かれていました。

 この作品はその初めて読んだサンデーで、最も印象に残った漫画でした。というわけで、この作品だけのために630円を払い、購入しました。
 ところが、その扱いを見たときは、驚き呆れました。前後編あわせて36頁なのですが、前編扉だけは原寸で、2頁目から33頁までは16分の1に縮小され、元々32頁だったものを2頁に押し込めているのです。
 当然ながら、目をこらしてやっと台詞が読める、というほどの小ささです。安永先生の特徴の一つに独特の描き文字や、コマのスミに書かれた「キャラへの突っ込み」みたいなギャグがあるのですが、もちろん判読することは不可能です。
 最終ページでは、残りの3頁を縮小率4分の1で載せていました。当然、1頁余るのですが、そこには作者による「(前略)、今回は、エコ企画で36ページを4ページに圧縮してお送りします。だからまあ、えー、読むのが面倒な人は飛ばしてもいい。」という笑えない自虐ギャグか書かれていました。そして、残りのスペースには穴埋めで「完」という文字がありました。この文字だけで、前の頁に載った漫画2頁くらいの大きさがあります。
 確かに原寸で36頁載せるのは他の作品との釣り合いもあって難しいかもしれません。しかし、あと6頁使って、全てを4分の1で載せることくらいはできるでしょう。
 作り手の作者およびファンに対する悪質な嫌がらせとしか思えませんでした。さすがは、原稿を乱雑に扱って、作者から裁判をおこされた前歴のある会社なだけの事はあります。改めて、この会社が漫画家や作品をどのように認識しているが分かりました。
 その上、かつての編集者たちが、「漫画への思い入れ」みたいな談話を書くのですから、余計に不快感が増します。冗談抜きで、こんな会社は潰れたほうがいい、とまで思いました。
 ただ、載った漫画そのものには何ら罪はありません。目をこらしながら何とか読んだ内容は、26年前と同様、楽しむことができました。そして、当時の台詞をほぼ正確に自分が覚えていた事も確認でき、改めてその言い回しがいかに当時の自分の心に焼き付いていたかを再認識できたのも嬉しいことではありました。
 そしてあらためて、こんな非常識な大きさでなければ、より一層楽しめたのに、と悲しく思いました。

2009年07月15日 23:09