腕立て一代男(安永航一郎先生)

2000/09/03

掲載・週刊少年サンデー(1983年夏)
 初めて週刊少年サンデーを買った時に掲載されていた前後編読み切り。あまり漫画を読んでいなかった頃なので、「腕立て伏せなんかを題材にするとは、漫画の世界もいろいろあるなあ」と思ったものだった。無論、それから17年間、腕立て伏せを題材にした漫画を読む機会はないが。
 主人公の国東玄舞はとある腕立て伏せ道場のホープである。そして道場主の娘(名前忘れた)とも悪い仲ではない。しかしそこに南太平寺五郎というさすらいの腕立て伏せ道場破りが現われ、あっさりと道場主を倒し、玄舞に勝負を挑む。普通は道場の看板を賭けるとしたものだが、南太平寺は「そんなかまぼこ板のおとーさんには用がない」といい、道場の実権を賭けることを要求するのだ。
 そして玄舞は圧倒的な力の差の前に破れ、道場から追放される。冷たいことに道場の仲間もあっさりと南太平寺に寝返り、道場主の娘も南太平寺に接近した。
 その頃、道場を追放されて山に篭った、玄舞は、幻の名人・腕立て仙人と出会う。腕立て仙人の「あまりのスピードに腕が見えない腕立て伏せ」、さらには「顔立て伏せ」「ひげ立て伏せ」などという超人的奥義を見た玄舞は、打倒南太平寺のために腕立て仙人に弟子入りした。
 そして復讐のために道場に現れた玄舞だが、かつての仲間に冷たくあしらわれた上、修行の成果も空しく、前回とまったく同じパターンで一コマで敗れ去る。そして次に腕立て仙人が南太平寺と戦おうとする。
 その時、南太平寺の口より、かつて彼も腕立て仙人の弟子であった事があかされる。南太平寺は、「腕立て伏せのスピードをつけるための訓練」と称して「煮えたぎった湯の中からぬかみそをつかみ出す」という修行を命じられ、失敗して大火傷を負い、それがきっかけで腕立て仙人の元を去ったのだ。(※ぬかみそなのだから、つかめるわけがない)
 そう、南太平寺の驚異的な腕立て伏せの力は、腕立て仙人への復讐のために養われたものだったのだ。そして南太平寺は見事、腕立て仙人をも倒し、道場主の娘や門下生達の祝福を受ける。そして「戦いは終わった。だがまた新たな敵がいつ襲ってくるかわからない。頑張れ僕らの南太平寺、負けるな僕らの南太平寺」というナレーションが流れるのだ。
 一見目茶苦茶なオチだが、もし最初から南太平寺が主役だったらありふれた勝敗でしかない。「とにかく勝てば正義」をミもフタもなく表現した名作と言えよう。


「心に残った名作」

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