2009年07月02日

教員の存在価値?

 とある雑誌に「はらぺこあおむし」というロングセラーの絵本を描いた、エリック=カールさんの記事が載っていました。なんでもその作者はドイツ系アメリカ人で、第二次大戦中はナチス時代のドイツで過ごしていたそうです。
 その時、彼が持つ絵の才能に気付いた美術教師は、ナチスに「退廃芸術」と烙印を押された、ピカソなどの絵を隠れて紹介したそうです。当局にバレたらその教師は制裁を受けた可能性はあります。しかし、その危険を冒しても、その才能を開花させたかったのでしょう。その効果もあって、カールさんは、世界中で読まれる本を初め、様々な作品を世に生み出したわけです。
 だからと言って、別にその美術教師が後世に名を残しているわけではありません。もちろんその人も、自分が名声を得たいために危険を冒してまでピカソなどを教えたわけではないでしょう。

 一方、日頃から従軍慰安婦否定など、右翼的発言で知られる埼玉県知事が、「国旗・国歌が嫌いな教員は辞めるしかない」などと発言したそうです。今だとある程度物議をかもすでしょうが、カールさんが高校生だった頃の日本では、このような事は誰も言いませんでした。
 何しろ、当時は全ての学校に「ご真影」が配布され、それを紛失だか破損だかした校長が、責任を感じて自殺した、という時代でした。当然ながら、少なくとも表向きには「国旗・国歌が嫌いな教師」などという存在はあり得なかったわけです。
 当然、県知事氏の目指すのも、そのような世の中なのでしょう。何しろ、高い地位にいる人たちがより一層効率的に儲けるには、そのような教育で「国旗・国歌」に象徴される、「上からの命令」に従順な人ばかりが世の中にいたほうが都合がいいからです。
 ちなみに、mixiの日記などを見ると、この知事に賛同する人も多数います。その中には「死ね」だの「国から出て行け」などと言う、これまたカールさんが高校時代の日本で一般的だった思想を表明している人もいました。また、産経新聞も「賛成のメール殺到」などと喜んで報じています。
 抑圧されていた時代に、危機を冒してでも、才能を伸ばそうと努力した教師がいた一方で、その頃に比べれば進歩したはずの現代日本にはそのような発言をする政治業者とそれの賛同者がいるわけです。
 まあ、その県知事氏および賛同者のおかげで、その美術教師の偉大さをより一層認識することができたとも言えます。だからと言って、彼らに感謝する機は毛頭起きませんが・・・。

2009年07月02日 23:51