2008年09月02日

バージョンダウン

 将棋や囲碁には「持ち時間」という考える時間を制限するルールがあります。それを管理するための機械として、二つの時計をくっつけたような「対局時計」というものがあります。
 1980年代半ばまでは、本当にただ「二つの時計をくっつけただけ」程度のものしかありませんでした。ところが、私が大学に入った頃に「ザ・名人戦」という、センスまるなしの名前ながら、極めて使い勝手のいい商品が登場しました。
 この商品は、従来機種が持っていなかった、最も需要のある機能を搭載していたうえに使い勝手もよく、あっというまに定番商品となりました。人気漫画「ヒカルの碁」でも、この対局時計はプロ試験編などによく出てきました。

 さて、その登場から15年ほど経って、「第2弾」が製作されました。ところが、これは完全な「バージョンダウン」でした。設定が複雑になった上に、実際にこの時計の利用者が絶対に用いないようなルールが多種多様に設定できるようになっており、その結果、一番普通に使われるルールの設定がやりにくくなっているのです。
 というわけで、かなり不評だったのか、今度は5年も経たずして、新バージョンが出ました。ところが、それを触ってみて衝撃を受けました。何と、これまでの不便だった点をさらに「強化」し、より一層使いにくくなっているのです。
 「初代」は、数回触れば、誰でも設定ができるほどの使い勝手の良さでした。ところが、この「最新版」は同封のマニュアルを熟読しても、正しい使い方が分からない、というほどの難解さなのです。しかも、初期不良が多いというおまけまでついています。
 一般的に、人にしろ物にしろ、時間に応じて進歩するはずです。それに対し、この時計は完全にその反対方向を行っています。
 なぜ、そのような自然の摂理(?)に反するのかと、逆に興味を持ってしまったほどすごい「代を追うごとのバージョンダウン」でした。

2008年09月02日 00:52