2008年03月27日

突っ込みどころだけで構成された文章

[ 交通 ]

 数年ぶりに、日経BPのIT-PROメール購読を再開しました。読んでいるうちに、鉄道に関する題名の記事がありました。さっそくクリックしたところ、そこには信じられないような文章が載っていました。
 まず凄いのは題名と本文の関連性です。未完の国鉄改革 Part2などとなっているのですが、最初に出てきた記事は、「東武鉄道の特急で喫煙席を予約しようとしたら、全席禁煙だと言われた」から始まるのです。どのへんが「国鉄改革」なのか、といきなり呆れました。
 筆者はそこでの駅員の態度を批判しています。それはまあいいのですが、肝心の「どこがまずかったのか」も「正しくはどうすべきだったのか」も書いていません。そのため、単なる全車禁煙に腹を立てた喫煙者の愚痴、としか読みようがなくなっています。

 二つめの、「三浦半島から成田空港に大きな荷物を抱えていくのが大変だ」という苦情についても、突っ込みどころ満載なのですが、とりあえず省略します。
 そして究極は三つ目の「普通乗車券と定期券の違い」です。書いた人が怒っているのは、「定期券では区間内で途中下車が出来るが、普通乗車券ではできない」という事のようです。ところが、直後に「別に普通乗車券で途中下車可能にしろと言っているわけではない」と言っています。その後の論理構成もよくわからないのですが、結論だけ言うと、「定期券で途中下車のみならず、本来の通勤・通学以外の用途での利用ができないようにせよ」などと言い出しているのです。
 そのために提案した手段がこれまた想像を絶します。
 例えば,平均的な就業形態が週5日勤務ということであれば,通勤定期は月曜日から金曜日だけ有効ということも考えられる。勤務形態がそれぞれの企業ごと,職場ごとに違うということなら,企業別・職場別に定期券用データを作成すればいい。そこで,Suicaの出番だ。自動改札のSuicaによって,定期券と定期券運賃はその内容を変更できる。私はこういう企業向けサービスの充実で,運賃収入が増えるのではないかと推察している。
 要は、定期で途中下車したり、会社が休みの日に使ったら割増運賃を取って儲けろ、と言いたいようです。途中下車に関しては、利用者からの苦情を別にすれば、さほど手間をかけずに出来ると思います。また、「平日のみ有効」で割安の定期券を作る、というのも比較的簡単にできるでしょう。ただし、土日利用に課金する増収よりも、割引による減収のほうが上回るよう可能性が高いでしょうが。
 ところが、その後の、「職場別に定期券用データを作成」をやるのに、どれだけの手間がかかると思っているのでしょうか。交代制の会社などだったら、シフト表を鉄道会社に提出して、それと連動させろとでも言うのでしょうか。さらに、休日出勤が生じた場合は、鉄道会社にも届けを出せとでもいいたいのでしょうか。
 そして、利用者にそれだけの迷惑をかけて、一人一人の勤務形態に対応した「日別定期券料金追徴システム」を作った場合、それによる増収分でシステム構築・保守費用が回収し、なおかつ利益も出ると、正気で考えているのでしょうか。
 他の部分も文章・論理・システム・交通のいずれの観点から見ても目茶苦茶です。はっきり言って、一行残らず全てが突っ込みどころだらけ、という文章でした。
 仮にも「IT-PRO」を標榜するサイトなわけです。そこが、こんな天才を紙一重突破してしまったような愚痴と妄想を、よくもまあ載せたものだ、と呆れました。ちなみに、この記事が最初に載った時点では、初歩的な単語・固有名詞の間違いがあり、読者の指摘を受けて直った、という形跡がありました。どうやら、推敲・校正は一切行われていなかったようです。
 酒を飲み過ぎた筆者が、勢いで書き殴った文章を送ってしまい、それがそのまま載ってしまったに違いない、と冗談抜きで思いました。あまりの凄さに、別の意味で感動してしまった文章でした。

2008年03月27日 01:16