2007年08月14日

分かっているほうがいいのか悪いのか

[ 漫画 ]

 ヤングアニマルで羽海野チカさんが「三月のライオン」という将棋漫画を連載しています。今回の話では、「対局盤面」の掲載がありました。これまでも、将棋漫画に出てくる盤面は、実際のプロ将棋に出てきたものがよく使われてきました。とはいえ、プロ将棋を理解できるほどの棋力がない私には、出典もその価値も分からない局面ばかりでした。

 しかし、今回の話の盤面は、見た瞬間にどのプロ将棋か分かりました。その対局は、プロの間でも極めて重要度の高いものでした。しかしながら、その時使われた戦法は、私が学生時代に愛用していたものですが、プロではほとんど使う人がいませんでした。ところが、それが重大な勝負で用いられたのです。それだけで驚いたのに、そのプロは私のような素人の想像を絶するようなその戦法の活用で勝ったのです。それに衝撃を受け、6年近く前に指された局面にも関わらず、その将棋は覚えていました。
 ただ、その「元ネタ」が分かってればいいというものではありません。むしろ盤面や、その戦法が使われるまでの経緯を知っているだけに、逆に漫画の中での主人公とライバル(?)の描写には違和感みたいなのを感じてしまいました。もちろん、作者の描写力とは関係ありません。ただ、「元ネタ」が印象が強すぎただけの話です。

 そのような事を考えているうちに、ヒカルの碁の事を思い出しました。あの作品には当然ながら、碁の盤面がよく出てきます。特に、藤原佐為が塔矢行洋に対し、「神の一手」を指した瞬間などは、盤面の意味が全く分からないのに、読んでいて衝撃が走るほどの描写でした。
 とはいえ、おそらくその盤面も碁のプロ棋戦で出現したものなのでしょう。その意味が分かっている人にとって、逆にあの「神の一手」の盤面は、どのように見えたのだろう、などと思えてきたのです。今回の私同様、あの部分の描写がいくら迫力があっても、「元ネタ」の印象がそれを薄めてしまうのでは、などと思えてきました。
 それゆえに、もし今後、「三月のライオン」が盛り上がり、極めて重要な展開において、このような「既知の盤面」が出てきた場合、自分は純粋に話を楽しめるのだろうか、などと、不安(?)に思えてきたりもしました。
 まあもっとも、最初に書いたように、元々頭に入っているプロの盤面など数えるほどしかありません。さらにここ一年半ほどはプロ将棋そのものを全然見ていません。したがって、そんな心配は、杞憂でしかないのではありますが・・・。

2007年08月14日 01:10