2006年12月14日

 10年ほど前、当時いた職場でえらくひどい評価され、「窓際以下」の扱いを受けた事がありました。はっきり言って、その扱いに、仕事に対するやる気はかなりなくなっていました。
 しかし、その最悪の環境のなかで、貴重な出会いをすることができました。その人は守衛さんだったのですが、物の考え方・見識・責任感と、あらゆる点において当時いた職場の最高職の人間より圧倒的に格上でした。いろいろな事を教わりましたが、特に忘れられないのは前の職場が放火された時の事でした。火元となった一室にその人は飛び込み、初期消火に成功。後でその部屋に入ったら、蛍光灯が溶けるほどの火勢でした。もし、その人の活躍がなければ、建物が全焼していたかもしれません。
 いずれにせよ、その人に直接的・間接的に多大な指導を受けました。仕事の事はもちろん、初めて後輩の結婚式のスピーチを頼まれ、何を言えばと悩んで相談した時も、的確な助言をもらいました。その通りに話したところ、主賓である後輩に後で感謝された、などという事もありました。
 それらを含め、その人のおかげで自分もそこそこ成長することができました。おかげで、当時は不快きわまりなかった「左遷」も、いまではその人の指導を受ける事ができた、という点において、振り返ってみれば貴重な経験だったとすら思っています。

 その後、その人はガンをわずらい、闘病生活に入りました。しかし、その大病についても、風邪をひいたのかと同じような感じで対処しており、平然と「ガンなんだよね」と笑っていました。昨年の夏に再入院された時にお見舞いにいった時も、逆に見舞った私を気遣っていただき、恐縮したほどでした。
 その後も季節の挨拶はしていたのですが、夏にいただいたお中元の伝票が、これまでの手書きだったのが印刷になっており、気にはなっていました。そして昨日帰宅したところ、訃報が届いていました。大病なだけにある程度覚悟はできていたものの、やはりかなりの喪失感がありました。
 本人にも照れくさくて言えませんでしたが、私にとっての「人生の師」と言える方の一人でした。これから自分がどうなるのかわかりませんが、その人の教えを受けた事を誇りに思って人生を全うしたいと思っています。ここで書くのもなんですが、本当にありがとうございました。そして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

2006年12月14日 01:55