2009年01月10日

注文の多い料理店

 宮沢賢治の有名な小説である「注文の多い料理店」ですが、先日、この作品の事を考えて、話の落とし方の不可解さに気付きました。
 あの話は主人公が食べられそうになった時に、冒頭で泡を吹いて死んだはずの猟犬がなぜか生き返って化け猫と思われる「料理店主」を撃退します。それで主人公は助かるのですが、この猟犬の復活の意味が分かりません。
 これが、主人公達が犬を愛しており、それに報いるため、というのなら分からなくもありません。しかしながら、主人公達は犬のことを購入した代金でしか評価していません。
 そうやって考えると、この「犬が復活して主人公を助ける」に必然性がありません。これがまだ、「山の中ではぐれてしまった」くらいなら分かるのですが・・・。

 そうやって考えているうちに、一つの仮説が思い浮かびました。当初はこの話、間抜けな主人公達が自らを「調理」し、化け猫に食べられて終わり、という構想で作られていた、というものです。
 しかし、そのオチだとかなりグロくなるうえに、商業誌的にもよろしくないなどの理由で、書いているうちに方針が転換されたのでは、と思ったわけです。
 そこで、主人公達を助ける必要が生じ、その役として、冒頭に出てきてすぐに死んだ犬が抜擢(?)された、というわけです。
 これなら、あのような唐突すぎるオチになったのも説明がつくのでは、と思いました。もちろん、今となっては確かめる術は存在しないのですが・・・。

2009年01月10日 23:55