2007年06月18日

マリーンズ、独立リーグ球団を傘下に?

[ 野球 ]

 各メディアの速報として、マリーンズが四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスを買収する、という記事が流れました。両球団のサイトを見ても公式的には何の発表もありません。また、詳しいことはよく分からないので、まだこれについて論じる段階ではなさそうです。
 ただ、現時点の報道を見ると、やけに批判的な文章が目立ちます。「ドラフト不正の温床になりうる」だの「社会人の人材難が予想される」などと言った声が上がっている、などと、今回のマリーンズの行動が、「選手の囲い込み」や「アマ破壊」であるかのようです。

 まず、「ドラフト不正の温床になりうる」ですが、これには二つの意味で大きな疑問があります。今回の談話と普段からの発言を見る限り、バレンタイン監督の構想は、別に「マリーンズだけが、浦和に続く二つめのファーム球団を保有したい」というものではなさそうです。理想的には12球団全てがファームを拡張しようと言っているわけです。
 ちなみに、この「ファームの拡張」が大きく言われたのはこれが初めてではありません。今から3年前、近鉄バファローズを潰すことに端を発して、パリーグを廃止しての一リーグ化が言われた時、当時の西武のオーナーは「球団を減らす代わりに三軍を充実させる」などと発言しました。しかし、それに対して、当時の一リーグ賛成派の商業マスコミは「ファームの充実を言うのは一理ある」みたいな論評をしていました。それがなぜ、12球団維持を前提としての発言だとこうなるか理解不能です。
 だいたい、これまで「ドラフト不正の温床」はどう処置されていたのでしょうか。この半年ほど、スカウト活動に関する問題が何度も報道されました。しかし、その結果は、「ライオンズだけが青田買いをやっていて、ベイスターズだけが上限を超える契約金と初年度年俸を那須野投手に支払っていた」という、誰一人納得できない「結論」で終わりました。
 厳しい批判にさらされ、渋々「希望枠」は撤回されたものの、一部球団・選手をスケープゴートにしただけで、抜本的な問題が何ら解決されていません。既存の「不正の温床」を放置しておいて、「今回の件が不正の温床になりうる」などと言っているわけです。ちなみに、以前から希望枠制度を厳しく批判し、今年の問題の時もいちはやく自球団の希望枠不使用を宣言したのはバレンタイン監督でした。
 また、仮に、今回、他の11球団が動かずにマリーンズのみがファイティングドッグスを買収したとします。しかしそれによってどのような「ドラフトの不正」が行われると言うのでしょうか。かつてのプリンスホテルは、西武ライオンズと同じグループですが、ある時期以降は、普通に各球団がプリンスホテルの選手を指名して入団していました。
 同様に、買収された球団に有力な選手がいると思ったら、マリーンズより先に他の球団が指名すればいいだけです。マリーンズへ行くための入団拒否多発が心配なら、ドラフトで指名拒否した選手が別の球団の指名を受ける権利を得るまでの年数を延ばせばいいだけの話です。

 もう一つの「社会人野球の衰退」もわけがわかりません。この四国アイランドリーグができたのが二年前で、今年からは北信越にも独立リーグができました。しかし、それと企業の社会人野球撤退との関連性を論じた話など聞いたことがありません。それが、なぜ既存の球団が既存の独立リーグ球団に資本参加すると急に「社会人野球の衰退」につながるのでしょうか。
 そんな、存在し得ない「社会人野球の衰退」を気にする暇があるなら、現在起き続けている、「高収益企業でも安易に野球チームを『リストラ』する」という企業の姿勢を問題視するほうが先でしょう。もちろん、それらの企業から大量の広告費を貰っている商業マスコミに、それに対する突っ込んだ報道などできるわけがないのですが。
 ちなみに、現時点で唯一、他球団関係者の発言は、読売の球団代表氏のみ。その内容は選手育成はプロが自前でやる方がいい。巨人は育成選手の指導者を雇っている。ロッテ球団の意見か、バレンタイン監督の意見か分からないが、野球協約では他の組織と活動できないことになっているので、慎重に見極めないといけないとのこと。最後まで「希望枠」撤廃に反対し続け、毎年のようにFA選手や他球団の外国人主砲を入団させている球団の代表なだけに、非常に「説得力に富んだ」発言となっており、大変笑えました。
 今に始まった事ではありませんが、各報道関係企業には、「現状の野球界の枠組みを最優先する」という立場に拘泥せずに、野球界全体の事も少しは考えて報道してほしいものです。

2007年06月18日 23:47