2006年07月26日

人生を左右する布一枚

 乗り換えようと駅の中を歩いていたら、前方に床に座り込んでいる女子高生がいました。最近ではすっかり路上や車内で地べたに座り込む人も珍しくなくなり、そのくらいでは変だとは思わなくなりました。しかし、この女子高生はさらに変でした。そのしゃがんだ体制のまま、野球の捕手のような姿勢で立ち上がったのです。そちらの方向に歩いていた私は、その「一部始終」を見てしまいました。
 距離はかなり離れているので、分かるのは「制服を着ている」「足の姿勢が通常ではない」という事だけで、それ以外は何もわかりません。しかし一瞬、その立ち上がる様を目撃したのが、何かすごい事であるかのような気分になってしまいました。

 著名人だの新聞記者だの教師だのが、「その一枚」を携帯カメラで撮影しようとして地位も名誉を失ってしまうニュースをよく見ます。そのようなのを見たり聞いたりするたびに、「何でそんなしょうもない事で」と思っていたのですが、いざ経験してみると、彼らの心境が少しは理解できるような気がしました。
 しかし、その一瞬が終わって冷静な状態に戻ると、やはり布が一枚が一瞬見えただけの事でしかない、という事に気づきました。当然ながらそれによって何ら得るものもありません。もしかしたら、その布一枚のために人生を棒に振った人たちも、後になって同じような心境になって後悔しているのかも、などと思いました。
 というわけで、そのような「踏み越えてしまった人々」の心境の一片を理解(?)できた、という点においては貴重な経験ができました。

2006年07月26日 00:39