ながいけん閣下新作短評2009年

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第三世界の長井・第六話「アンカー 後編」

2009/10/11

 設定的に気になったのは、友人達が、「長井」は博士の影響を受けて変になった、と言ったところでした。ならば以前は、普通の高校生だったが、博士に会ってからあのような「妙なアメリカ人」に変貌したのか、などと思いました。
 あと、何話か前にネタになった「宇宙人と闘うための大きな石」を博士が手渡し、それを受けた「長井」が「心太いゼ」と言ったあたりに、往年のながいギャグに通じる言語センスを感じました。とりあえず今は、そのようなセンスのある台詞を一つでも読めればよし、と思っています。

追記・とか言いつつ、結局、この回を最後に毎月感想を書く気力がなくなりました。
しかしながら、単行本1・2巻の感想は書きました。

第三世界の長井・第五話「アンカー 前編」

2009/9/13

 前半前回の続きで、「キャラ設定会議」みたいな事をやっていました。
 後半になって、「長井」が少年と共に学校から帰ります。そこで、前半で書かれた「設定」の一つ「長井には関羽と張飛という義理の弟がいる」にあわせて、二人の「義弟」と友人が登場。「義弟」の一人が「兄者、我ら生まれし日は違えども、星座は一緒」と言います。
 この言い回しには、久しぶりに「らしさ」を感じ、楽しめました。

第三世界の長井・第四話「虚構とリアルのフォリ・ア・ドゥ 後編」

2009/8/14

 前回から続いて、「飛ビ跳ネサセ星人」と「長井」の闘いとなりますが、「長井」が逃げ、「博士」はそれを追いかけ、二人は去っていきました。
 そして、前回出ていなかった「音那」との会話のあと、少年はマンションの一室に行って、会議みたいな事を始めます。
 そこでは、何だかよく分からない専門用語が飛び交い、「長井」「博士」の設定について論じられます。今ひとつわかりませんが、少年を含めた彼らは「長井」「博士」のキャラ設定をしている人たちのようです。

 昔から、「作品世界を管理している人間がいる」という設定は描いていました。ファンロード最終作のような形になった「解散の辞」もそうですし、「モテモテ王国」でもたまにそれっぽい描写がありました。
 後半部分の「会議」にはそれに通じる物を感じました。
 ただ、残念ながら、それには面白さがありません。これは前回から続いていた闘いについても同様です。
 かつての天才的な「ながいギャグ」を知っているだけに、より一層、物寂しさを感じました。

第三世界の長井・第三話「虚構とリアルのフォリ・ア・ドゥ 前編」

2009/7/11

 題名の「フォリ・ア・ドゥ」とは、妄想などの症状が発生した人と一緒にいる人が、その人の妄想を共有してしまう、という「精神病の伝染」を意味する言葉だそうです。
 今回の話は、学校の下校風景から始まります。少年が学校の前で、紙片を見ながら何やらつぶやいていると、やけに哲学的な話をする女子高生が歩いてきます。それに続いて、「長い」が登場。制服も着ておらず、相変らず異様な表情をしています。しかし、女子高生達は、普通に彼をクラスメートとして、会話をしていました。
 ただ、「博士」に話が及ぶと、今度は一転して、皆、彼を気味悪がります。異常な言動が多いせいもあるのでしょう。とはいえ、「長井」の前回同様の奇妙な会話は普通に聞いているのですから、不思議なものがありました。

 その後は、同様に博士が来て、「長井」と前回と同じ不可解な会話を繰り広げ、その会話の中で、敵の宇宙人が「飛ビ跳ネサセ星人」であることが判明しました。
 そして唐突にその「飛ビ跳ネサセ星人」が一人で登場。いわゆる「宇宙人服」を来て、顔面は白頭巾と水中眼鏡にマスク、といういでたちです。
 そして、「神聖モテモテ王国」でよくあった「主題歌」が登場。一応、「ダイターンスリー」の替え歌のようで、題字のパロディまでありましたが、元の歌とは全然関係ない言葉が並んでいました。
 そして、「飛ビ跳ネサセ星人」は、「トービトビトビィィィ!」と言って踊り出し、脇には書き文字で「ヤケクソっぽく」と書いてありました。
 そして「長井」を指さして「ピョン」と言うと、「長井」が跳ね上がります。といっても一瞬飛んだだけで、着地したところで話は終わりました。

 途中、少年が「長井」と「博士」の会話の意味不明さに呆れている描写がありました。キャラが読者と一緒になって、展開についていけなくなる、というのは不思議かつ興味深い趣向だとは思いました。
 「神聖モテモテ王国」の扉に書いたアオリに「読者すっ飛ばし漫画」というのがありましたが、読者どころか、登場人物まですっ飛ばしている漫画と言えます。
 題名や、女子高生の哲学的な台詞には興味は持てましたが、含みがありすぎて、あまりピンときません。ただ、一方で「校門から出てきた以外、全部違う気がする」という台詞まわしや、「ヤケクソっぽく」という書き文字には、「らしさ」を感じました。「らしさ」ついでに、次号当たりでは久々の「ながいギャグ」を炸裂させてほしいものですが、果たしてどうなるのでしょうか。

第三世界の長井・第二話「第一話の続き」

2009/6/12

 前回の最後に出てきた「長井」と、突如出てきた謎の博士の会話で話が進んでいきます。
 「長井」はアメリカ人という設定らしく、会話にカタカナが混ざります。しかし、英語を使うわけではありません。
 一方、博士は眼鏡をかけた穏和そうな紳士で、白衣の下にスーツを着ています。というとまともな人のようです。しかし、頭には金属でできた一角獣の角のようなものがついており、首の部分も金属になっています。特殊なアクセサリーなのか実はロボットなのかは不明です。
 また、動かすのは手だけで、後の部分は全て同じ絵をコピーして使っています。そのため、表情の変化などは一切ありません。
 そして以下は、博士が「長井」を宇宙侵略から守る人類最後の希望、みたいな話をし、「長井」は嫌がるも、結局連れて行かれる、というやりとりが、奇妙な語調で繰り広げられます。
 そして二人が消えた後、謎の少女が作品設定に関するような謎の言葉を残して去り、その後、空にUFOが出現した、というところで話は終わりました。

 博士の描写で、台詞がフキダシ、さらには枠線まではみ出している描写がありました。一つの絵を使っている事も含め、変わった表現方法だと思いました。
 他にも奇妙な描写・言い回しは色々とありました。ただ、いずれも奇妙だとは思いましたが、ギャグだとは思えませんでした。
 まあ、15年ほど前にサンデーで復活した時も、最初の「極道さんといっしょ」はともかく、その後発表された読み切り二作品はあまり「らしさ」が感じられませんでした。しかしながら、連載となった「モテモテ王国」は「ながいギャグ」が炸裂していました。
 というわけで、前回や今回は、読み切り二作品のような位置づけの「肩慣らし」で、これから面白くなる可能性はまだまだある、と思うことにしました。

第三世界の長井・第一話「描き上がったところまで」

2009/5/13

 小学館から創刊された「ゲッサン」で新連載「第三世界の長井」が始まりました。漫画では五年ぶり、随筆を含めても三年ぶりの執筆活動です。
 第一話となれば、主人公や設定世界の紹介があるとしたものですが、そのような描写はほとんどありませんでした。それどころか、主人公と思しき少年の名前すら不明です。唯一分かったことは、「音那」という少女がいて、その少年に敵視されている、という事だけでした。
 見開きの扉ページでは、上段に戦車と機動隊が描かれている一方で、下段には偽善者トーマスとアンゴルモア大王という「神聖モテモテ王国」キャラがいます。したがって、ギャグ漫画なのかストーリーものなのかすら分かりません。
 話の内容は、少年が手紙を見て驚き、そこに音那と出会います。そこから行なわれる彼女との会話で進みます。そして、手紙に書かれた何やら奇妙な設定の男となったのですが、そこに現れたのは、ギャグ調の筆致で描かれた、筋骨隆々とした謎の青年だった、という所で話が終わりました。
 最終ページを見るまでは、初のストーリー漫画なのか、とも一瞬思いました。そういう意味では、最後に出てきたギャグ筆致のキャラを見たときは一安心みたいな感情が心にわきました。
 第一話を読み終えた時点では、どのような漫画なのかさっぱり分かりませんでした。次回では話の全貌が見えてくるのでしょうか。