ながい閣下新作短評(2005年前半)

ながい閣下トップ2006年2005年後半2004年後半2003年から2004年前半まで

2005/06/18(土) ファンロード7月号の随筆「万物斉同・17」

 今月も内面的な話でした。「記憶」を中心に自己同一性みたいな事を語っています。久々に会った人が年齢を重ねていた事や、数年前に別れた「モトカノ」からの素っ気無いメールなどの話を混ぜながら、「記憶」のことや、どこに住んでいても夜は同じ世界のように感じる事などを書いています。
 この文章を読んだ後、長井氏に関する自分の記憶の事をいろいろと思い出しました。「ムウミン谷の攻防」を初めて読んだ時に笑いすぎて窒息しそうになった事。それから2年後にバスの中で「パンロード」(当時のファンロードをパロった企画モノ)を読んで笑いすぎて周囲の目が気になった事。さらには「サンデー超増刊」で約5年ぶりの復活を果たした「極道さんと一緒」は、コンビニで買う前に立ち読みし、そこで笑ってしまった事などです。
 不思議な事に、作品そのものや、それについて笑った事はもちろん、その周辺の事まで覚えています。たとえば、「ムウミン谷の攻防」を読んだのは、従兄弟の家のリビングだったとか、「極道さんといっしょ」を読んだコンビニはファミマだった、などという事です。
 今回の「万物斉同」流に言うのならば、「ながいファン」である自分は、このような記憶の断片が集まって構成されている、となるのでしょうか。これから長井氏が創造する作品はどのような形で自分の記憶に残っていくのでしょうか。
 そのような事を考えさせられた今回の話でした。

2005/05/15(日) ファンロード6月号の随筆「万物斉同・16」

 3ヶ月前に続き、内面的な事を題材にしていました。今回は「価値観の再構築」みたいな話。具体的な内容は書かれていませんが、何かの事件がきっかけで、これまでの価値観が崩壊したところから始まります。そのような状態の自分を、「根底的な所では強いから大丈夫」と客観視しているしているところが興味深いです。
 価値観崩壊中は、「他人のためだけに生きるか」とまで思っていた長井氏ですが、結局復活します。そして価値観を再構築した際に、自分が「長井建」から「ながいけん」になったと自覚します。これについても具体的には「二重人格というほどではないが、考え方の基準が異なる」という説明しかありません。しかし、文脈から見ると、「ながいけん」のほうが、創作活動向けの一面なのか、という気もしました。
 少年サンデーで漫画を描いていた頃も、ある日突然、という形で休載となり、再開と休載を繰り返した末に突然終了しました。FRで読切を毎月描いていた時も、「最終回」こそあったものの、その去り方は唐突でした。不思議かつ残念に思っていたのですが、もしかしたら、当時もこのような「ながいけん」と「長井建」の「交代」があったのかもしれません。
 そんな事も考えながら、興味深く読みました。できれば、この「ながいけん」と「長井建」の間を自由に調節し、安定して作品を発表してもらえると非常に嬉しいのですが・・・。

2005/04/16(土) ファンロード5月号の随筆「万物斉同・15」

 2ヶ月前に戻って「アストロ球団」ネタになりました。何でも、風邪をひいたため、との事です。今回は、登場人物紹介、という形をとっていますが、過去2回と違い、あまり印象に焼きつくようなネタはありませんでした。とりあえず、「親が兄の治療費をケチって弟にバイクを買い与えたために兄が弟を憎んで敵チームに入った」事と、「特攻隊気取りでアストロ戦士にボールをぶつける事しか考えていない投手がいる」事と、「作中の川上哲治読売監督(当時)が禅寺で修行するが落ち着きがなく、坊さんに叩かれまくった」という事はわかりました。
 次回はぜひ体調を万全にして、違う漫画の紹介を書いてほしいものです。

2005/03/17(木) ファンロード4月号の随筆「万物斉同・14」

 4ヶ月ぶりに基本型(?)の「橋本君いじり」でした。今回は、「彼」の「メタルダー」なる「説教するような内容の主題歌の特撮」についての熱い思い入れを綴ったメールが主題です。その「熱さ」について、「メーラーのスクロールバーが小さくなるほど」だそうです。しかし、長井氏は読みもしません。そして返事は一言「そうですか」だけでした。これならスクロールバーは小さくなるどころか、出現すらしないので読みやすそうです。
 にもこりず、「彼」は風邪で熱を出しながらも、再度熱いメールを送りつけるのですから、よほど好きなのでしょう。その思い入れにほだされたのか、長井氏もそのメールはざっと目を通したようです。
 思い入れがあるのはいい事ですが、その熱い思いをメールする場合は、同好の士だとわかっている人にのみすべき、という教訓を含んだ話でした。

2005/02/15(火) ファンロード3月号の随筆「万物斉同・13」

 連載2年目に突入です。今回、上の絵の部分に変化がありました。「人物」はこれまでと同じ「ラスカル軍団風」なのですが、背景がやけにぎっしり書き込んであります。
 文章のほうは、これまたいきなりの方向転換で、「宇宙と生命の神秘」について語っていました。率直に言って、個人的にはあまり関心のない分野の話です。とりあえずひっかかったのは、「既存の宗教には入っていないので」という一文でした。この「既存の」に深い意味がなければいいのですが・・・。
 とりあえず、ギャグらしきギャグはありませんでした。

2005/01/15(木) ファンロード2月号の随筆「万物斉同・12」

 先月に続いて「アストロ球団」の評論です。今回は、特に「球五」なる人物に焦点を当てて紹介しています。
 彼は、アストロ球団の中では異端的な存在だそうです。他のアストロ戦士は「アストロ超人」ですが、彼だけは「アストロ人間」なのではないか、と長井氏は言っています。
 そこまで異端扱いされるのでしょうか。それは、彼が他の人々と違い、「野球」をやりたがるという、彼の行動に原因があります。たとえば、戦いを前にした特訓において、主人公は山に篭り、自らの身を縛り付けて背中を丸太の棒に直撃させたり、電動ドリルを素手でつかんで自ら大怪我したりという、正気とは思えないような「特訓」をします。他の仲間もやはり大自然の中で似たような事をやります。ところが、球五だけは野球場であるアストロ球場で特訓を積み重ねます。
 確かに、「野球のルールに似たとんでもない男ゲーム」をやるにあたって、野球場で特訓を行うのも変な話です。
 さらに凄いのは、そのアストロ球場の重力ルーム(?)で習得した打法です。その名は「バム打法」と言います。
 アストロ球団の連中が繰り出す技は確かに異常ですが、技の名前は天文現象など、普通の人でも知っている言葉からつきます。しかしながら、確かにこの「バム」とは耳慣れない言葉です。そこで長井氏は辞書で「バム」の意味を調べます。すると、そこには
「怠け者・いいかげん・くだならい・だめな・人間として無価値といったきつい含みを伴なう」という、すごい意味でした。つまり、バム打法とは「人間として無価値といったきつい意味を伴なう打法」なわけです。
 ちなみに、長井氏は「ボムの誤記だろう」と冷静に分析しています。いずれにせよ、一人だけ野球選手みたいな所で特訓をしながら、そのような悲惨な名前の打法を習得させられるのですから、やはり並ではありません。
 とにもかくにも、球五の「異端ぶり」と、打法の名前を、「アストロ球団」を読まずして印象づけた一文でした。