ながい閣下作品短評(2004年後半)

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2004/12/15(水) ファンロード1月号の随筆「万物斉同・11」

 これまでの日記から「漫画評論」に模様替え。第1弾は「アストロ球団」でした。
 ある意味定番と言える「裏ギャグ漫画」ですが、不勉強な事に私は読んだ事がありませんでした。しかしおかげでかえって、長井氏ならではの鋭さを面白さを兼ね備えた文章を純粋に堪能できたと言えるかもしれません。
 17年前、氏の書いた雀鬼はぐれ旅の「人名事典」を読んだ時、主人公・大神順三の風貌や特徴はもちろん、脇役の「大砲兼」の頭の形まで心に焼きつきいたものでした。その「異様な漫画を、読んでいない人の心に焼き付ける」という技術は17年たった今も健在でした。

 この漫画は一文字で表現すると「男」となるそうです。「中にそれだけしか入っていない」とまで断言しています。やっている事は「野球のルールに似たとんでもない男ゲーム」とのこと。まあ、「打球を取ったロッテ(オリオンズ)の中堅手がそのまま電光掲示板にぶつかり、その状況の中、平然とアストロ球団の選手がダイヤモンドを一周している」そうですから、確かにそうなのでしょう。
 人はどんどん重傷を負ったり死んだりします。しかし、死んだ人をヘリで上空から落とすと生き返るのだそうです。
 そのように、漫画の異常さの核心を明快に表現する一方、独特の突っ込みも冴えます。「6ページもかけて走者にタッチする」や「何人もの野手が走者に襲い掛かる」という異常な表現を紹介しながら、それぞれのプレイについて「アウトだったようです」などと、いきなり「普通の野球的視点」を混ぜて論じたりしていました。

 というわけで、とんでもない漫画をさらにとんでもなく表現する長井流漫画評論、来月が今から楽しみです。

2004/11/15(月) ファンロード12月号の随筆「万物斉同・10」

 今回も長井氏と「橋本君」しか出てきません。しかしながら、この話は楽しめました。理由として考えられるのは、先月の話などが「『彼』が行動(先月なら引っ越して寿司をたかる)をし、それに応じる長井氏」という構成なのに対し、今月の話は、長井氏が「橋本君を守る会」を作る、というように、主体が長井氏にあるからと思われます。
 基本的になぜ「彼」を守る会を作る必要(?)があるかというと、「彼」がこの連載でバカにされているからです。にもかかわらず、バカにしている「元凶」の長井氏が「会」を作るという所が面白さとなっています。会員は長井氏と「彼」のみ。「モテモテ王国」2巻86頁のような組織が思い浮かびました。

2004/10/15(金) ファンロード11月号の随筆「万物斉同・9」

 相変わらずですが、この作品の面白さは「橋本君」の出場頻度と反比例します。今回は、引越しをした「彼」に何度も何度もしつこく寿司をたかられて、仕方なく買って新居に行く、というだけの話でした。したがいまして、面白さは上記法則の通りです。

2004/9/16(木) ファンロード10月号の随筆「万物斉同・8」

 今回は、WEBサイト作成を目指す話。作成の助言などで「橋本君」の登場場面が多かったのですが、「役立たず」の一言で片付けられるくらい。長井氏がネタに値できるような面白い行動はありませんでした。
 読み出したときは、「長井氏公式サイトが近日開設か?」と半分本気で期待したのですが、「途中でPCが壊れて断念」というオチなのは残念でした。WEBという表現媒体は色々な意味で長井氏の才能を自由にかつ如何なく発揮できる所だと思うのですが・・・。公募すれば、無償でサイト作成を請け負う人や団体はいくらでもあるでしょう。今回は残念な結果に終わりましたが、ぜひ実現させてほしいものです。
 あと、文末に一言「忙しくなる」みたいな事が書いてありました。これが作品の発表だと嬉しいのですが・・・。

2004/8/15(日) ファンロード9月号の随筆「万物斉同・7」

 今回の「ネタ」は「橋本君と料理を作る」というもの。あまりにも平凡すぎるため、突っ込みようもなく、特に印象に残るギャグはありませんでした。
 そして文中には「自分が無職だから」という言葉が3回ほど使われていました。2ヶ月前にも「掲載誌が決まらない」と書いていましたから、残念ながらヤングサンデーを含め、商業誌の連載の見込みがないのでしょう。
 そうなると、あの週刊少年サンデーからの「撤退」が惜しまれます。あの時、もう少し妥協して、それこそ編集部の作ったセンスのない「清原・桑田の友情物語」などで「モテモテ」を続けていれば、妥協した内容とはいえ、その根底にある圧倒的なセンスで一定以上の水準の作品にはなったでしょう。そうすれば、ある程度のファンは見込まれ、週刊少年サンデーに定着できたかもしれません。
 実際にそのような事をされた日には、私を含めた「コアなファン」は離れてしまったかもしれません。でも、このような「橋本君と料理した・無職だ」などという文章を読んでいると、結果論としてはそちらのほうが良かったのかも、などと思えてしまいました。
 もちろん、最善の道は、長井氏の天才的センスとその従来の枠にとらわれない漫画作成方法に理解を示した編集者が、作品を発表する最善の環境を整える、という事なのですが・・・。
 画家のゴッホも、存命中はその才能が認められず、不遇の人生を送ったそうです。なんか、それを髣髴させるような寂しい、「無職だから」の一言でした。

2004/7/15(木) ファンロード8月号の随筆「万物斉同・6」

 今回は秋葉原に行った話。フィギュアを買った後にコスプレ喫茶に行く、というネタです。扱いやすい題材な事もあり、「ネタ出しネタ」も少なく、快調に筆が進んでいる、という感じでした。
 前振りの後、秋葉原へ。長井氏はテーマパークみたいだ。テーマは『行け!おまえら』と非常に分かりやすく本質(?)を表現します。さらに、科学と萌えが融合した男率9割のユートピアとこれまた具体的に描写。なんか、そのままアキバ祭りとかの宣伝文句に使えそうです。
 そしてフィギュアを買った後はコスプレ喫茶に行きます。まず長井氏の目についたのは黙って座っている「フレッシュボーイ」達でした。さらに、「恰幅のいい30代後半の紳士」の食べっぷりなども観察しています。一応、肝心の(?)コスプレ女店員については「予想外にとてもかわいかった」と好意的な評価をしていますが、後はひたすら自分達を含めた「紳士達」の様子を書いていました。
 なお、ページ上部の絵は、コスプレ喫茶の風景。といっても、「恰幅のいい紳士」も「コスプレ店員」も同じように「ラスカル軍団キャラ」でしか描いているのですが。
 ネタが良かったこともあるのでしょうが、連載始まって以来、最もセンスの冴えがあった文章だと思いました。

※各作品の寸評は、心に残るギャグ・コメディに掲載しています。