ながい閣下新作短評(2006年)

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2006/3/16(木) ファンロード4月号の随筆「万物斉同最終話・月の上の猫溜まり」

 ハシラの説明によると、長井氏が漫画界復帰を目指すため、今回で最終回との事でした。
 さて、その最終回の内容は、夜の散歩で、空き地にたむろする猫に関心を持った、という話です。別に、猫の所作で印象に残ったとかいうわけではなく、ただ、何となく関心を持っただけです。猫の視点を想像して、「右から左に動く人間」としかとらえていないだろう、などとも書いています。
 猫たちのいる空き地は、囲われており、長井氏と猫の間には厳然とした境界があります。その距離感を、「猫たちは月の上にいるみたいだ」と表現しています。
 その自分と猫たちとの短時間の邂逅を、ごく平凡な日常としている一方で、英雄も自分も猫も存在している事については皆同じ、と題名である「万物斉同」という言葉を引いて語っています。このあたり、荘子を読んだ事がないので今ひとつわかりません。とはいえ、長井氏の価値観が伝わってくるように感じます。
 その一方、この自分と猫たちの関係についても、客観的に認識しています。いつ関係が終わるか分からないし、その後に思い出す事もあるかもしれない、と言っています。自分の内面を含め、あらゆる事を客観視している感じです。

 この2年間、長井建氏の文章を毎月読み続けました。もちろん、氏の十八番である「笑いを創出する技術」も存分に楽しめました。その一方で、今回のような、独自の価値観に基づいた、自分も他人も動物も風景もそれぞれ等距離に離したような視点による文章も非常に興味深く読めました。
 早いもので、はじめて長井氏の作品を読んでから22年の年月が流れました。その間、ファンであり続けて良かった、と思うことは何十回もありました。しかし、その逆は一度もありません。
 「漫画家復帰」の話がどのくらい具体化しているか分かりません。いろいろ大変とは思いますが、是非とも目標を達成して、その才能に見合った実績を漫画界に残していただきたいものです。

2006/2/16(木) ファンロード3月号の随筆「万物斉同・25」

 今月は「昨秋の橋本君とのメールのやりとり」を元にした小ネタ集といった感じ。「ゲゲゲの鬼太郎のやおい」「MGアッガイ」「サブマリナー」「エスパー魔美」などを扱っています。
 「ゲゲゲの鬼太郎」は、「子泣きじじいは誰にでも抱きつくから総攻めだ」といったようなどちらかと言うとベタなネタ。個人的にはネタそのものより、長井氏が「801」と表記していた事のほうが印象に残りました。
 「MGアッガイ」は、「彼」が買った事をネタにしたもの。なお、「MGゾック」についても言及していました。やはりそれはボラスキニフの魂をMG化したものなのでしょうか。
 「サブマリナー」はアメコミのキャラで、全裸に近い格好で暴れ回り、たまに敵側に寝返るような変態キャラのようです。ちなみに、頁上半分にそれらしい絵が描かれていますが、版権を意識して「オリキャラのサブである」という注釈がなされています。
 「エスパー魔美」ネタは、メールで「エスパー真実」と変換したメールを「彼」にからかわれたのを逆手に取り、「サラリーマン風のエスパー『真実』」を描いた、というもの。ちなみに決め台詞は「あなたのハートに率直に申し上げる」とのことです。
 余談ですが、調べてみたら、「エスパー魔美」のアニメ放映期間は1987年から89年でした。これは丁度ながい閣下がFRの水色ページで執筆していた時期と重なります。それを知った時は、当時描かれた、ながい作品がいろいろと思い出されました。
 なお、12月から忙しくなったため、メールのやりとりは減ったとのこと。その時、何をしていたかは次号で明かされるのでしょうか。

2006/1/15(日) ファンロード2月号の随筆「万物斉同・24」

 今月はゲーム紹介でした。題材はプレステの「影牢」とファミコンの「シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件」です。
 前者は、城の中に迷い込んだ人が罠にはまってボコボコになって死んでいくというゲームのようです。その「罠」にはお笑いの伝統小道具である「落ちてくるタライ」から、「巨大な魔神の足」まで何でもありのようです。そのため、「タライが頭にぶつかった後、足下が爆発し、さらに魔神に蹴られる」などというわけのわからん展開になるようです。
 頁上半分の絵には、そのような罠にかかった挙句、格好つけた言葉を言いながら死んでいく被害者の描写がなされています。さらに、長井氏は、その被害者を見ている主人公の後頭部が印象に残っているようです。
 もう一つの「シャーロック・ホームズ・・・」は「アドベンチャー」と題されていますが、実際は「蹴りアクションゲーム」だと長井氏は論じています。ホームズが相手を蹴りまくってやっつけ、その相手から探偵資金(?)を巻き上げながら、敵の組織を倒していくゲームだそうです。したがって、ホームズでありながら、推理などは一切行いません。また、長井氏は途中で投げ出したのですが、その範囲では「伯爵令嬢」も出てこないそうです。
 面白く読めましたが、どのへんまでゲーム製作者が狙ったギャグで、どのへんからは製作者が意図しない「面白さ」なのかは良く分かりませんでした。ところで、魔神にホームズと、今月の主題は「蹴り」だったのでしょうか。

2005/07/15(金) ファンロード8月号の随筆「万物斉同・18」

2ヶ月連続で内面的な話が続いていたのですが、編集部からダメ出しを受けたようです。そこで今月は無難な(?)「橋本君ネタ」になっていました。長井氏も「真面目なのはすぐ書けるのだけれど」と書くのに苦しんでいました。まあ、「ネタ」が、「アニメ専門学校の学長」という内輪ネタと、「『彼』が用具も持っていないのに、オセロゲームの対戦に熱意を燃やす」では、確かに文章にしづらいでしょう。
 結局、「オセロをやる準備をする」みたいな事に大半を費やすという、苦心の跡が見られる文章になっていました。
 今のファンロードの読者の需要は全然わかりませんが、内面的な話はダメでこのような話ならOKなのでしょうか。不思議なものです。