極道さんといっしょ(ながいけん閣下)

2001/05/22

1995年頃のサンデー超(スーパー)増刊号
 ある号のサンデーのギャグ漫画新人コンテストで、いきなり佳作だか何かに「ながいけん」という名前が掲載された。ファンロードを去って5年以上たったある日の事である。「これで待ち焦がれたながい閣下の作品が読める」という喜びと「なんでこんな低い評価なんだ。だいたいその作品をなぜ掲載しないのだ」という怒りが交錯したものだった。
 その作品は掲載されなかったが、しばらくたって、「サンデー超(スーパー)増刊号」に、早速ながい閣下の約6年ぶりの新作「極道さんといっしょ」が掲載された。
 いくらかつて単行本を出した事があるとはいえ、サンデーでは「新人」であり、この作品は「デビュー作」である。したがって作者からの挨拶がハシラに掲載されたが、そこからまず「新人の挨拶」を超えていた。冒頭部分は以下の通りである。

こんにちは読者の皆様(奴等)。私が嫌われ者のながいけんです。(以下略)

 初登場で読者を奴等呼ばわりするなど、前代未聞だろう。しかし、奴等呼ばわりされた「読者」としては、相変わらずの卓越した感覚を喜ぶよりなかった。

 本編のほうは二部構成となっている。最初の話の主題はでんぷんである。風景は小学校の教室で女の先生が理科の授業ででんぷんの説明をしている。しかしなぜか教わる児童はすべて極道さんなのだ。そして、その極道さんとして自然に(?)授業を受けているのだ。たとえば先生が「でんぷんはどうやって取るのかな?」と質問すると、「そんなもん、己の器量で取ってくればええんじゃ」と返事するのである。それらの会話が当然の事として、話は淡々と進んでいくのである。

 もう一つの話は、キリスト教の神父のような衣装を着た三人の話である。自ら「我々は聖なる人たちで困った人を助ける」と称している。しかしその三人の構成は一人は普通の少女なのだが、もう一人は極道さん、最後の一人は「神聖モテモテ王国」に出てくる偽善者トーマスなのだ。
 この三人が歩いていると、「謎のおっさん」が飛び降り自殺をしようとしている場面にでくわす。女の子は「聖なる人たち」としてとめる事を主張するが、トーマスは他人事のように振舞う。結局説得しにビルの屋上に行くのだが、極道さんは「くはは」で始まり、「悪いようにせんからこっちに来いや」などと極道言葉で説得をしようとするので、「謎のおっさん」はビビッてしまう。一方その頃、トーマスは、ビルの麓に男の死に場所と大書されたダーツの的みたいなものを書き、「君のために最高の死に場所を用意した。さあ、ここをめがけて飛び降りてくれたまえ」などと言うのだ。
 「謎のおっさん」は「あんな所で死んでは末代までの笑いものだあ!」と言って、飛び降りる意思が萎えるが、一方で目の前の極道さんは怖いのでそちらに行くわけにもいかない・・・。という所で話は終わる。

 相変わらずのギャグセンスながら、ファンロード時代のパターンをひきずっているわけでもない新生ながいギャグに、コンビニで立ち読みした時点で爆笑してしまった。
 それにしても、なぜこの時点で編集者は「この作者は凡百のギャグ漫画家のように、固定的な設定をもとにパターン化したギャグをやるような器ではなく、度ごとに個性的なキャラクター・設定を作って独創的なギャグを組み立てる事のできる天才である」という事に気づけなかったのだろうか。
 確かに「神聖モテモテ王国」は少年サンデー史上最強のギャグ漫画になったとは思う。しかし、既存のギャグ漫画と同じ形式で展開させられてしまった結果、ながい閣下の才能の一割程度しか発揮されずに終わってしまったように思われる。  



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