この作品の存在を知ったのは今から丁度15年前の1987年5月12日の事だった。ファンロードという雑誌で読みきりギャグマンガを連載していたながいけん閣下が、「ファンロード」という雑誌のパロディである「パンロード」という企画を行ったのだが、その中のコンテンツに「シュミの特集・雀鬼はぐれ旅」というものがあった。
漫画に登場するキャラクターの似顔絵と寸評をながい閣下が書いているのだが、主人公の「大神順三」なる人物のところにはゴルゴ13モドキのカットとともになんでも麻雀で解決する強引さと、さいとうプロから脱走したような顔がたまらぬわとあった。
他にも、ライバル(?)キャラとして紹介された、一休さんの「しゅうねんさん」のような頭をした「大砲兼」というキャラも印象的だった。
「パンロード」を読んだ直後は、しばらく書店の劇画コーナーをチェックしたが、それらしい作品はなかった。その事もあり、この漫画が実在するか、それともながい閣下の頭の中でひねり出された架空の作品なのか分からなかった。しかし、この「雀鬼はぐれ旅」という題名はそれから何年たっても、一瞬たりとも記憶から消えることはなかった。
「パンロード」を読んでからちょうど15年と半月が経過した日、漫画喫茶で時間をつぶしていた筆者は、特に読みたいものもなく、漫然と本棚を見ながら歩いていた。すると偶然、「雀鬼はぐれ旅」という文字が目に飛び込んできた。
あまりの偶然に驚きながら本を開く。主人公はやはり「さいとうプロから脱走したような顔」だったし、大砲兼の頭もやはり「しゅうねんさん」だった。
大手貿易会社に勤めていた主人公は、1年の修行でイカサマを修得して天狗になっていたが、ある日雀荘で「不思議な老人」に完敗する。その老人の勧めに従い、会社と恋人を捨て、小樽にいる雀師に会うために北へ旅立つ。その途中の青函連絡船で最初の闘いをし、以下小樽→小諸→岐阜→京都→柳川と、わけのわからないルートで旅打ちを行う。
ながい閣下は全国雀鬼めぐりツアーを展開。関わると死ぬと評していたが、全くもってその通りの内容だった。
基本的に、主人公の麻雀はイカサマもしくはイカサマ支援がほとんど。京都の闘いにいたっては、イカサマをしない相手に試合前に睡眠薬を仕込んでチョンボをさせ、そのショックで相手は発狂、などという外道な事までやらかす。毎回出てくる悪役も色々と卑怯な手段を使うが、ここまで外道な奴はいなかった。
そして、7人の死と1人の発狂、数十名の重傷者を出した「はぐれ旅」の果てに主人公の得た結論は「二度と牌を握らない」という事だった。
ながい閣下がネタにするにふさわしい作品であった。そして、1ページの「人名事典」で、話の大筋および異常性を的確に表現し、かつ読者の心に焼き付けた、ながい閣下の凄さを改めて実感させられた。
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