8.ハードディスクのデータを完全消去する

 データを間違えて消してしまい、復旧できずに困った経験はどなたにもあると思う。別名で保存すべきところを間違えて上書きしてしまい、元のデータを消してしまったり、フォーマットしてはいけないディスクをフォーマットしてしまう、などというやつである。
 しかし、実際は「上書き」はもちろん、「フォーマット」でも、データは消えてはいない。通常の操作ではそのデータにアクセスできなくなるが、データ復元ソフトを使えば消えたはずのデータを復元できる。
 逆に言うと、パソコンを廃棄したり売却するとき、通常の操作では消したはずのデータを復元されてしまう可能性がある、ということだ。実際、廃棄したパソコンから、顧客名簿データが復元され、問題になった事もある。
 そこで、「データ復元ソフトでも復元できないデータ消去ソフト」というのが存在する。これを使ってデータを消去すれば、安心してパソコンを処分できる、というわけだ。
 データ消去と復元の原理は以下の通りである。まず、フォーマットだが、これはデータを初期化するわけでなく、データの位置情報のみを初期化するだけらしい。上書きの場合も同様で、データそのものを削除するわけではない。さらに、一度や二度の上書きなら元に戻すのも可能なようだ。それらの性質を利用して、フォーマット・上書き・削除したデータを元に戻すのが「データ復元ソフト」の機能である。
 したがってデータを消すには、データそのものの格納されている領域に、関係ないデータを何度も上書きすることによって、復元不可能な状態にする必要がある。その機能を持つのが「データ消去ソフト」なわけだ。

 というわけで、うちの職場でも、リース切れや故障で処分するパソコンには、データ消去ソフトをかけてから処分することにしている。ところが先日、10年以上前に購入したPC9801および、その外付けハードディスク(HDD)を処分する、という話が出てきた。
 当初は、「このソフトはWindowsでなくても消去してくれるから大丈夫」と安心していた。よくそのマシンを見ると、3.5インチFDDドライブが存在しなかった。一応、外付け3.5インチFDDもあったのだが、うまく作動しない。今のパソコンならば、メーカーのサイトからドライバをダウンロードすればなんとかなるかも知れないが、10年以上前の商品のドライバがあるとは思えない。したがって、データ消去ソフトは使えない。
 データ消去ソフトが使えない以上、データ流出の危険性がなくパソコンや外付けHDDを処分するには、HDDそのものを破壊するよりない。こうして、極めて原始的な「データ漏洩防止策」を行う事になった。
 パソコン・外付けとも筐体をバラし、HDDを取り出す。しかし、そこから、実際にデータが入っている金属の円盤部分を出すのがまた一苦労だ。もっとも、これが頑丈に出来ているからこそ、HDDは多少の衝撃を受けてもデータを守ってくれるわけだから仕方ない。トンカチ・ペンチなどを使って、強引に装甲をはがしていくと、しばらくして金属の円盤が見えた。
 あとはこれを破壊するだけだが、実際にどう破壊すればデータを再生できなくなるかを考えねばならない。本来なら溶解でもすれば完璧なのだろうが、さすがに無理だ。結局、円盤部分などをトンカチとペンチで損傷+変形させた。HDDは円盤を高速回転させ、そこに記録されているデータを読み込むわけだから、円盤が回転できないようにし、さらに表面そのものも加工(?)したのだから、データの読み込みようがないだろう。

 こうして、「IT」とか「デジタル」と対極の方法で、データ流出予防措置を行うことが出来た。さらに言うと、通常のハードウェア関係の作業が細心の注意を払う、精密な作業である。そういう意味でも今回の作業は、通常と対極的なものだった。
戻る次へ
「電算室」に戻る

トップページへ戻る

ページ別アクセス数調査用