スケベスト=オンナスキーシリーズ
(ながいけん閣下)

2003/09/29

掲載・1988年の「まんがファンロード」
 「神聖モテモテ王国」の原型となったシリーズ。前編の「Z作戦」では主役のスケベスト=オンナスキーが一人でナンパ(?)を試み、後編の「MO作戦」では、ファーザーの原型となるキャラ「スケベヌコフ父さん」が登場する。
 「Z作戦」は、「ヘブライ人」という他作品の主役(顔はいいが、性格は腐れ下道)が、「HOTEL・来やがれスケベ共」の前で女性をくどいている。その「ヘブライ人」をぶん殴って代わりに女性をくどこうとするが、警察を呼ばれて連れて行かれる、という所から始まる。
 このスケベスト=オンナスキーは自らのを「並みのド助平のいやらしさが富士山の高さなら、自分のいやらしさは、富士山がとんがった場合の高さだ」などと言っている。とはいえ、実際に何をするかといえば、「成功するわけのない手法でナンパをし、警察を呼ばれて連れて行かれる」の繰り返しである。本人も家でトンカツを食べながら「だーけど警察には弱いんだー」などとオバQみたいな歌を唄っているが、その一方で「このような欠点がなければ、私はエロトピアに送られてしまうんだー」などと「現状認識」をしている。
 それにしても、エロトピアの代わりに週刊少年サンデーに送られるとは、この時点ではオンナスキーも作者も読者も想像すらしていなかっただろう。
 結局、オンナスキーは街を破壊するほどの事をしながらナンパに失敗しつづける。そして最後に見たものは、「HOTEL・来やがれスケベ共」の前で、別の女をくどいている「ヘブライ人」だった。

 さて、続編の「MO作戦」だが、相変わらずナンパに失敗して警察を呼ばれるオンナスキー、という所から始まる。そして家でいつも通りトンカツを食べていると、シルクハットに片眼鏡という、西洋紳士みたいな男がいきなり現れて並んでトンカツを食べだす。いきなり「君の父、スケベヌコフ父さんだ」と自己紹介し、初対面ながら強引に父の座に収まり、ナンパに協力しようとする。
 たしかにスケベストほど単調ではないが、催眠術を使おうとして自分で目をまわして倒れたりするなど、結局成功はできない。
 そこで、最後の手段として、古典的な「自分が女性を襲い、それをスケベストが助ける」と提案する。そこで公園のベンチに座っている女子高生を「襲う」のだが、その場面がすごい。鼻をほじりながら、「娘、私と婚前交渉を前提としたおつきあいをしませんか、ワーハハハ」と言うのだ。露骨な表現なしに「女性を襲う」を描いた「名場面」だと思っているのは筆者だけだろうか。しかし、この作戦はその女子高生がこの申し出に対し、頬を赤らめて「はい」と言ってしまったために失敗する。怒り狂ったスケベストにスケベヌコフはぶん殴られ、スケベストは警察に、スケベヌコフは病院にそれぞれ運ばれてしまう。そして、怪我したスケベヌコフが寝ている隣で、トンカツの前でうなだれるスケベスト、という場面で話は終わる。

 このシリーズでは都合9回「ナンパ」をしている。その中で筆者が一番印象に残ったのは、見ず知らずの女性に対し「久しぶり」と声をかけ、「どなたでしたっけ」と返されて「アフリカのンガポポ小学校の時にいっしょにシマウマにまたがってライオン狩りしたじゃないかーっ。忘れたのかい、その時いっしょに行ったバンポパが食われたじゃないかあ」というものであった。成功するかどうか以前の問題としてどのへんが「ナンパ」なのかわからない。とにかくよくこのようなシチュエーションを思いつくものだ、と作者のセンスに改めて感心させられたものだった。