3.みさき食堂(千葉県富津岬・閉店)

 房総半島の真ん中のあたりから東京湾に細長い岬が突き出ている。先端部分は公園となっており、潮干狩りの季節などは観光客で賑わう。とはいえ、さほど目立った観光資源はないので、大きな観光施設などはない。
 公園地帯に入ってすぐの所に観光客用の食堂がいくつか並んでいる。そのなかの一つが「みさき食堂」だ。
 ここに最初に訪れたのは89年の2月だった。筆者の大学の寮が富津にあり、そこにサークル合宿に行った。そこでは昼食が出ないため、公園のほうへ散歩がてら食べれるところを探しに行った。すると、オバサンが「よろしかったらどうぞ」と声をかけてきたのだ。店を選ぶのも面倒なので、そのまま入った。
 特徴のあるメニューはすべて貝に関係しているものだ。その中でも目立つのは「なめさんが・やきさんが」というものと「磯ラーメン」である。
 「なめさんが」というのはアオヤギ(バカ貝)をつぶしてたたいたもので、それを焼いたのが「やきさんが」である。筆者は「定食」として食べたが、これはどちらかと言うと、酒のつまみとして食べるほうがいいのかな、と感じた。
 もう一つの「磯ラーメン」はお気に入りで、よく食べた。これは塩ラーメンに貝や海藻を具として入れたものである。貝が質量とも豊富で、しかもすぐそこで取れたものなだけに美味しい。貝がここまでラーメンの具としてあうとは知らなかった。
 富津には春先に2回行っていたのだが、いつの間にか店の人に顔を覚えられるようになった。春先に集中してきているとはいえ、顔を覚えてもらえたのは嬉しかった。しかも、常連(?)ということでコーヒーまでサービスしてくれるようになった。
 昨年の春、大学の寮が廃止されてしまったため、富津に行く機会はなくなってしまった。しかし、あの磯ラーメンはまだ食べたい。幸い、家からそう遠くないので、またちょくちょく行こうと思っていた。

追記・その後、2010年冬に富津岬に行ったが、「みさき食堂」は営業時間が終わっており、別の店で磯ラーメンを食べた。
 そして2014年に久しぶりに検索してみたのだが、「食べログ」に「閉店」と書かれていた。
 大学の寮に続き、行きつけだった店も閉店したわけである。学生時代の思い出の場所が消え去ったという寂寥感を強く感じた。