伊予鉄道高浜線
2008/2/17
四国で初めて開業した鉄道は、国鉄(現JR四国)ではなく、この伊予鉄道高浜線である。また、私鉄としても日本で四番目に設立された鉄道だそうだ。ちなみに、伊予鉄道はJRに先駆けて、ICカード・おサイフケータイでの乗車を実現させた鉄道会社でもある。
その四国初の鉄道路線である、高浜線に乗ってみた。
線としての起点は松山市駅だ。しかし、横河原線と直通運転を行っているため、基本的な運行は高浜−横河原を往復する形になっている。松山市駅は、一番線が横河原線、二番線が高浜線、三番線が郡中線となっている。
日中は、三路線とも15分間隔での運行となっている。そして、松山市駅では、同じホームを使っている高浜線と郡中線は同時に発車する。
松山市駅の構内を出るとすぐに郡中線とは別れ、すぐに大手町駅に到着する。この大手町駅と続く古町駅については、別ページにて詳しく触れているので、ここでは省略する。
古町駅を出るとすぐに高架線となる。この部分は1998年に立体化された。高架が終わると、そこは衣山駅だ。余談だが、この高架部分は、一本のレールで構成されており、継ぎ目がない。そのため、他の区間とは、電車から発せられる音が異なっている。
衣山駅を過ぎてしばらくすると、左からJR予讃線が現れ、しばし併走する。そして西衣山駅に着く。駅とJRの線路の間は100mと離れていない。しかも、その間は空き地になっている。
伊予鉄道では路面電車を市内電車、高浜線などの普通鉄道を郊外電車と呼んでいる。そしてこの郊外電車と予讃線は接続駅が存在しない。一応、大手町駅とJR松山駅は市内電車一駅分の近さだが、接続駅とは言えない。せっかく場所があるのだから、ここに予讃線の駅を作れば利便性は増すだろうに、などと思った。
ところで、高浜線は終点の一つ手前である梅津寺駅まで複線化されている。しかし、電車とのすれちがいは全て駅で行われており、複線を活かしている所はなかった。ただ、ラッシュ時などは本数が増えるので、その時は駅間でのすれ違いがあるのかもしれないが・・・。
続く山西駅は、かつては三番線まであった。しかし、現在は真ん中の線は外されている。かつて貨物輸送が行われた頃の名残りなのだろうか。
続く三津は開業時に終点だった駅だ。次の駅は港山と、海を連想させる駅が続くが、車窓から海は見えない。しかし、続く梅津寺駅が近づくと、急に海岸に出た。そして梅津寺駅は、浜辺に隣接してホームが設置されていた。
最後の一駅間だけは単線になる。ただ、ほとんどの部分に複線用の道床は確保されていた。かつて複線だったのを単線にしたのか、それとも複線化しようとして完成できなかったのかは不明だ。ただ、梅津寺駅を出てすぐの所にある梅園の部分では、単線分の道床しかなかった。この部分がネックになって複線化できなかったのか、それともこの部分を梅園に提供して単線化したのかは謎である。
そして電車は終点の高浜駅に着いた。ホームの最先端を出たところにバス停があり、松山観光港行きのバスが停まっていた。鉄道の路線図などを見ても、高浜駅の先に松山観光港までのバス路線が描かれている。そして、ホームからバス停まで直進できる通路もある。そして「松山観光港行き■■バスのりば」という表示があった。ただし、現在は閉鎖されており、「■■バスご利用の方は、いったん改札口を出て下さい」と記載されている。■■の部分は塗りつぶされているが、かつては「連絡」もしくは「接続」という文字が記載されていたのだろう。
いずれによ、かつては電車のホームからバス停に直進できたのが、何らかの事情により、普通のバス乗り換えと同じ形態に変更されたようだ。もっとも、改札口を経由してもバスへの乗り換え時間は1分と違わない。
(※画像をクリックすると、同じ画面で大きい写真が開きます・以下の写真も同様)
駅舎は古びてはいるが、なかなか風格のある造りとなっている。
駅舎を出ると道があり、その向かいはフェリー乗船口となっている。そして向かいには興居島(ごごじま)が見える。なんでも、みかんが名産である愛媛県の中でも、特にいいみかんが穫れる所らしい。フェリーの時刻表を見たところ、10分くらいで行けるようだ。
行ってみたかったが、時間の関係で断念した。とりあえず、夕暮れ時の島の写真だけ撮っておいた。
次の電車まで15分ほどあるので、駅周辺を散歩する事にした。駅前にあった地図を見ると、四十島(ターナー島)という記載があった。
夏目漱石著「坊ちゃん」で、主人公が「赤シャツ」「野だいこ」と釣りに行った際に出てきた逸話に由来するのだろう。名付けられたいきさつは、「赤シャツ」が四十島を見てあの松を見たまえ、(中略)ターナーの画にありそうだねと言い、それを受けて「野だいこ」がどうです教頭、これからあの島をターナー島と名づけようじゃありませんかと言った事から来ている。
文章を読む限り、インテリぶる「赤シャツ」とそれに追従する「野だいこ」をバカにしているのが趣旨だと思われる。しかしながら、その「野だいこ」の一言が現実世界を動かしたわけだ。モデルになった人物および、名前にされたイギリスの画家も、これを知ったら驚くだろう、などと思った。
ただ、ターナーはともかく、夕暮れに海に浮かぶ無人島を見るのは楽しかった。ちなみに、生えている松は一度は枯れたものの、「坊ちゃん」を再現するために植え直したとの事だった。
いろいろ見ているうちに、乗るはずだった電車を一本逃してしまった。それほど興味深い、高浜駅周辺だった。