医療センターとひび野一丁目

2012/5/20

 幕張本郷から海浜幕張方面に行く京成バスの行先を並べると、「海浜幕張駅」「ハイテク通り経由海浜幕張駅」「テクノガーデン」「マリンスタジアム」「幕張メッセ中央」「幕張メッセ(東口)」となる。
 このように、幕張新都心らしさを強調する行先が多い中、本数は少ないながら、それらしくない名前の行先が二つある。
 一つは「医療センター」で、もう一つは「ひび野一丁目」だ。本稿では、この「らしからぬ行先」を持つ二つのバス路線をまとめて紹介する。

医療センター

 平日、土曜の朝から夕方にかけ、主に毎時00分に海浜幕張方面に行くバスの行先に「医療センター」というものがある。
 冒頭にも書いたが、他の行先が新都心らしさを存分に出しているのに対し、なぜかこれだけ、えらく素っ気ない名前だ。
 他にも病院を行先にするバスは全国に数多くある。しかし、普通は「日赤医療センター」とか「海浜病院」のように、具体的な固有名詞を挙げるとしたものだ。ところが、この路線だけは固有名詞を一切排している。

 幕張本郷からの経路は、日本一の大幹線である海浜幕張行きと同じだ。そして、高層ビル街を抜け、海浜幕張駅に着いた後は、右手に幕張メッセ、左手に高層ホテル街を見ながら、国際通りを抜けていく。
 そして、通りを抜けた所は、マリンスタジアムの敷地だ。医療センター行きのバスも、その敷地に入っていく。
 敷地に入ると、「幕張海浜公園入口」というバス停がある。目の前にはマリンスタジアムがあり、そちらに向かって道も伸びている。
 ところが、バスはその目の前にある野球場に向かわない。そして、右折して、球場から出る道に合流し、そのまま敷地を出てしまうのだ。
 別に球場前に寄っても所要時間は2分と変わらないだろう。なんでこんな奇妙な経路を通るのだろうか、と不思議に思った。

 そして、敷地を出ると左折して、右手に幕張メッセを、左手にマリンスタジアムを見ながら、海浜大通りという広い道を走る。
 ちょっと進むと、マリンスタジアムの正面入口がある。もし野球場に行く客の利便を図るなら、敷地に入って幕張海浜公園入口で折り返すよりも、ここにバス停を作ったほうがよほど便利だと思うのだが・・・。まあ、野球場に行きたい人は、普通にマリンスタジアム行きに乗ればいいだけ、という事なのだろう、
 そのまま海浜大通りを進むと、7分ほど前に渡った浜田川を再び渡る。続いて交差点を過ぎると、バスの左側は空き地で、右側はメッセの巨大な駐車場となる。その荒涼とした風景の中をちょっと走ると、左手に中層の白い建物が見える。
 なお、この交差点を右折して3分ほど走ると、8つ前に通り過ぎた、免許センターのバス停がある。
 そして、バスは左折してその建物の敷地に入る。つまり、ここが終点の「医療センター」なのだ。
 その名前から、かなり立派な建物を想像していただけに、こんな小ぢんまりとした建物だったとは、とちょっと驚いた。

 戻りも、同じように海浜大通りを通り、野球場の敷地に入る。そして、行きと同様、幕張海浜公園入口に止まった。
 このまま、行きと同じように右折して敷地を出るのかと思いきや、今度は直進してマリンスタジアムのバス停に止まった。
 そして、あたかも普通のマリンスタジアム始発幕張本郷行きであるかのような感じで、客を乗せて発車した。
 それを見た時、医療センター行きのおける「謎のショートカット」の理由が分かったような気がした。医療センター行きを普通にマリンスタジアムバス停まで運行すると、野球観戦から帰る人などが幕張本郷行きと間違えて医療センター行きに乗ってしまう可能性がある。それを防ぐためにあの特殊な経路を設定したのかも、などと思った。

ひび野一丁目

 2012年4月に、幕張本郷から新都心に行く新たな系統「幕04 ひび野一丁目行き」が誕生した。これまた、新都心に行く他のバスに比べると、かなり素っ気ない行先だ。しかも、この行先、この路線の開設にあわせ、既存のバス停の名前を変えたというのだから面白い。
 ただ新設路線と言っても、新たに開通した区間はバス停1つ分しかない。
 幕張本郷を出たバスは、ハイテク通り経由と同じ経路を急行運転で進む。
 筆者は、企業の一般的な始業時刻である朝9時ちょっと前に乗った。ハイテク通りに入って最初のバス停、シャープ・SIIでは何人か降りたが、次のキヤノンマーケティングでは誰も降りなかった。
 そして、次のIBMでも何人か降り、車内に残っているのは筆者を含めて4人となっていた。わざわざ路線を新設したわりには低い乗車率だ。
 そして、バスは国際大通りを横切り、イオンの脇の道に入った。入るとすぐ、千葉海浜交通・平和交通の「イオン幕張店」(千葉シーサイドバスでは未だに「カルフール」)バス停があるが、京成バスは通過した。
 そして、次の千葉海浜交通・千葉シーサイドバスにおける「県立幕張高校入口」があるところに、「ひび野一丁目」バス停があり、停車した。
 このバス停は、以前は京成も「県立幕張高校」という名前だったが、この路線が開通したのにあわせ、バス停名を改称した。幕張総合高校への通学に使われたくない、という意図でもあったのだろうか。
 その「ひび野一丁目」だが、目の前にかなり立派な建物がある。しかしながら、平日の午前中だというのに、敷地の入口は鎖で封鎖されていた。
 調べてみたところ、「海外職業訓練協会」という団体が運営していた国際能力開発支援センターという施設だった、しかしながら、2010年9月に閉鎖されたとの事だった。
 建物が立派なだけにもったいないと思った。それにしても、新設路線の終点の真ん前が閉鎖された施設、というのは珍しい。何らかの再利用の目処がたったため、そのアクセスとしてこの路線が新設されたのだろうか、とも思った。
 いずれにせよ、この「巨大な閉鎖施設前の終点」というのは不思議な趣があった。 (追記・これを書いた3ヶ月後に、150メートルほど離れた「若葉三丁目」まで延伸され、そこが終点となった。また、翌年から急行運転をしなくなり、現在に至っている)