ドアの開かないバス停

2002/10/29

 幕張本郷から「幕張新都心」のビジネス街を通り、海浜幕張駅・幕張メッセを経由して千葉マリンスタジアムまで行くバス路線がある。超高層のビジネスビルの立ち並ぶ「幕張新都心」と総武線を結ぶバス路線という事もあり、通勤時間帯の乗客数には驚異的なものがある。
 朝の8時台などは1時間に60本くらい幕張本郷駅を発車する。要は1分に1本である。しかも使われるバスは普通のバスのみならず、全長18mの連接バスもあるのだ。朝のバスターミナルはバスの行列も人の行列も長大だ。
 基本ルートは幕張本郷駅−幕張西二丁目−免許センター−富士通−NTT−テクノガーデン−海浜幕張駅−タウンセンター−幕張メッセ東口−マリンスタジアム、となっている(他に日中に1時間ほど、マリンスタジアムの先の「医療センター」まで行く系統もある)。
 通勤時間帯はそれに加え、幕張西二丁目・免許センターを通過(要はノンストップで「新都心」に行く)「急行」と、「新都心」内を大回りする「ハイテク通り」経由の海浜幕張駅行きがある。また、イベント開催時には幕張本郷からメッセやマリンスタジアムに直行する臨時便もある。(※路線図マリンスタジアム行き臨時便の詳細
 「ハイテク通り」というと、なんか特殊な先端研究所の集まりのようだが、通常の路線が通る「センターストリート」と街並みもビルに入っている企業の業種も変わらない。それにしても「ハイテク」とはセンスのない名前だ。ついでに言うと、NTTの正面玄関は「ハイテク通り」に面していない。そのあたり、「ハイテク通り」の命名者に何か含むところがあったか、と思うのは考えすぎだろう。

 そのハイテク通りのバスだが、平日の夕方に海浜幕張から幕張本郷に帰る機会は何回かあったにもかかわらず、乗ったことがなかった。そんなある日、2002年になって海浜幕張のバスターミナルの向かいがわに新たにできた建物に行ったら、そのまん前に「ハイテク通り経由幕張本郷駅行き」というバス停があった。
 幕張本郷から「新都心」方面に行くバス停は一箇所にまとまっている。そこからハイテク通り経由・急行海浜幕張行きも、ポールはそれぞれ分かれてはいるが、ほぼ同じ所から発車する。しかし、海浜幕張のほうは、バスターミナルのちょうど真向かいにある、という形になっていた。基本ルートのバス停と比べると、歩いて2〜3分くらいかかる。しかも今でこそ新築ビルのまん前だが、昨年までそこは広大な空き地だった。
 変なところにバス停を設けるものだな、と思ったが、その日は休日だったのでこのバス停からの発車はない。3分ほど歩いて基本ルートのバス停に行き、そこから帰った。
 それから数ヵ月後、平日の夕方に京葉線から帰宅する機会があった。海浜幕張で降りて駅を出るとすぐに基本ルートの幕張本郷駅行きのバス停がある。しかし元バスマニアとしては先日「発見」したバスを使いたい。そこでこの日は前回の逆で2〜3分ほど歩いて向かい側の「ハイテク通り経由」のバス停まで行った。
 ちょうどバスが止まっていたので入り口の前に立った。しかし、ドアが開いていないし、中にも客は乗っていない。「あれ、回送が一時的に止まっているだけなのかな」と思った途端、バスは発車して行った。後ろの方向幕には「幕張本郷駅」と書いてある。
 狐につままれたような気分になって時刻表を見たら「19時1分」となっている。時計を見たら19時2分だ。となると確かにあのバスは19時1分発の「ハイテク通り経由幕張本郷駅行き」なのだ。いずれにせよ次は7分発だ。5分ほど待てば来るから、それに乗ればいい、と思い、新築ビルの中を見物しながら時間をつぶした。
 19時6分にバス停の前に戻ったが、バスは来ていない。始発なのだから、普通は数分前には来ているはずだが、と不思議に思ったが、じきターミナルの中に停車しているバスの一台がやってきた。方向幕には「ハイテク通り経由幕張本郷駅行き」と書いてある。
 しかし、バス停に乗客が立っているというのに扉はやはり開かない。乗車をうながすようなそぶりをしたら、やっと開いた。しかし、運転手はそっけなく、「このバスは大回りですよ(だから向かい側の基本ルートに乗れ)」と言った。確かにそうだが、「ハイテク通り経由」との走行距離の差は500メートルほどしかない。向かいのバス停まで歩くことを考えると、このまま乗ったほうが早い。
 バスの営業免許の関係かなにかで、「海浜幕張始発」としているが、実際は「ハイテク通り」に入るまで客は乗らない。そのため、運転手の感覚では「ここは客を乗せないバス停だ」という考えが頭に染み付いているのだろう。
 いずれにせよ、「招かれざる客」として乗車した。ターミナルを出ると基本ルートと分かれて右折する。そして「テクノガーデン」というバス停があり、表示には「幕張本郷駅」と書いてあったが、乗客はおらず、バスも速度を落とすことのなく通過した。この「テクノガーデン」とは、数本のビルが建っている区画の総称である。路線図にもあるように、基本ルートにも「テクノガーデン」はあるが、こちらのバス停とは全然違うところにある。
 そして、カルフールのある交差点を曲がると、実質的な「ハイテク通り経由幕張本郷駅行き」の基点である「IBM」に着いた。バス停に行列もできており、今度は運転手も扉を開けた(当然といえば当然だが)。余談だが、この「IBM」はカルフールから歩いてすぐだ。平日の夕方にバスで買い物するなら、海浜幕張でなく、こちらに行った方がいいな、などと思った。
 そのままバスは「キャノン販売」「シャープ・SSI」で仕事帰りの客を拾い、「富士通」で基本ルートに戻った。この3つのバス停を通ったら、もう車内には立ち客が10人くらいいた。ちょうど目の前に基本ルートのバスが走っており、続行運転という感じになったが、そちらのバスもやはり同じくらいの混み具合だった。