「東京」を名乗る球団

2002/9/1

 今年の7月頃から、読売ジャイアンツのビジターユニフォームの胸のロゴが、これまでの「TOKYO」から「YOMIURI」に変わった。基本的には読売グループの組織再編などに関するものらしい。この変更は読売ジャイアンツ(以下「読売」と表記)のファンをはじめ、各所で不評のようだ。
 しかし、筆者はこのニュースを知って喜んだ。子供の頃から、あらゆる意味において読売のビジターの胸のマークに「TOKYO」はふさわしくないと思っていたからだ。

 1988年に南海からホークスを買収したダイエーが「福岡ダイエーホークス」となり、地域密着を意識した経営を行うようになってから、千葉ロッテ・大阪近鉄・横浜など、地域密着を意識した名前にした球団が増えている。そして、そのような方針はファンには好感を与えている。
 その一方で読売は、社を挙げてそれと反対方向に進んでいる。地域密着をかかげたJリーグが発足したときに、自社のチームから企業名をはずす事に最後まで反対した事は、サッカーファンでない筆者もよく覚えている。
 もちろん、「地域密着の経営・球団名」を名乗らなくてはならない、という決まりはない。したがって、読売が「企業中心の経営・球団名」を名乗るのは、規則違反ではない。
 にもかかわらず、つい最近まで読売のビジターのユニフォームに「TOKYO」という文字がついていたのは、球団の方針と違っているように感じた。そのため、それを「YOMIURI」に是正した今回の措置を、筆者は大歓迎している。

 とはいえ、日本の首都・東京がチーム名のみならずユニフォームからも消されることは、東京生まれの筆者としても寂しい。そこで気づいたのが、「ヤクルトスワローズ」の存在である。
 この球団はある時期から自然発生的に、得点を挙げるとファンが傘を持って東京音頭を歌って喜ぶ、という風習ができていた。そして、それにあわせるように、球団のほうも、試合中にマスコットに東京音頭を踊らせるなど、実質的な球団歌を東京音頭にしてしまった。
 もちろん、「東京音頭=東京」などという事はない。しかしながら、球団名に地名を関している球団だって、ここまで「地元」を意識するような応援をしたり、さらに球団がその応援にあわせる、などという事はないだろう。ちょうど、2004年からファイターズが札幌に移転する。そして読売がユニフォームから「東京」をはずす、となれば、スワローズが「東京の球団」を名乗るのに、何の障害もないはずだ。

 チーム名を「東京ヤクルトスワローズ(もしくは東京スワローズ)」と改め、胸のマークも「TOKYO」に改める。そして、都営地下鉄の駅で入場券を販売し、都内各所で野球教室を主宰するなど、とにかく「東京」を前面に押し出すのだ。
 そうすれば、胸のマークを「YOMIURI」にすることに抗議行動をした読売ファンをはじめ、多くの東京在住者がファンになってくれるのではないだろうか。そうすれば、神宮球場での「三塁側から埋まっていく」という現象も緩和され、営業的にもプラスになりそうだ。
 1980年代には「オーナーが読売ファン」とバカにされていたほどの球団だったが、野村監督招聘あたりから、明らかに経営方針の変化が見られ、実際、強豪球団へと変貌を遂げた。東京を代表する球団になる、という事は一連の強化策の流れにも沿っているとも思うので、ぜひとも実現させて欲しいものである。

 2005年12月20日追記・本日、古田新監督より申請のあった「東京ヤクルトスワローズ」への改名を正式に認められた。以前から主張していた身としては嬉しい限りである。ぜひとも、地域密着に成功し、「東京を代表する球団」としてより一層の成長することを期待したい。