プロ野球合併問題
2004年7月7日のオーナー会議-1

1.西武オーナーの発言

2004/07/08

 2004年6月13日の「オリックスと近鉄の合併発表」から1ヶ月近く経過した7月7日にオーナー会議が行われた。予想通り「合併は承認」「もう一組合併して1リーグ」というのが「結論」になった。以前から読売のオーナーが公言していたことなので、「そういう結論に達した」こと自体はさほど驚かなかった。しかし、現実としてそのような内定が出されるのは非常に腹立たしい事だった。
 この件の「主役」はもちろん読売のオーナーなのだが、ここではまず、「第2の合併の仕掛人」になった西武のオーナーの発言から取り上げてみたい。

 まず、冒頭に出てきたのは現在、プロ野球の試合を見ていて、あまりにもプロとは言えないような試合がいくつかあるんじゃないか、と思います。だった。いきなり、「選手が悪いから削減」という理屈である。
 このオーナーがどの試合のどのプレーを見て、そのような結論に至ったかわからない。まあ、1989年に、昨年に続きバファローズ・ブレーブスとギリギリの優勝争いをし、最後にブライアント選手の驚異的な4発によって惜しくも5連覇を逃した森監督(当時)に対し、「来年の監督?やりたいんならどうぞ」と言うほど現場を侮蔑する人なのだから、普通の選手のプレーなど、軽蔑の対象以外の何物でもないのだろう。
 ところで、「プレーの質が低いから2球団が無くなるのも仕方ない」みたいた偉そうな事を言っている西武オーナー氏だが、自らの総会屋への利益供与は「経営のプロと言えるような行動」なのだろうか。選手の場合、「プロとは言えないプレー」を続ければ、減俸さらには解雇という「報い」を受ける。しかし、彼は鉄道会社の会長はやめたものの、親会社の「コクド」の会長は続けたままだ。しかも、事件発覚当初は「気管支炎でしゃべれないから」という理由で会見からも逃げつづけていた。総会屋の利益供与およびその後の責任逃れの一連の態度を見ると、「プロと言えないのはどちらか」と思わざるをえない。

 その「質的向上」を主張する堤氏の「改革案」は「ファームの充実」であった。この案自体は、社会人野球との提携も含め、特に反対する点はない。ただし、この「ファームの充実」がなぜ「12球団2リーグ制」ではできなくて、「10球団1リーグ制」ならできるのかは理解不能だ。
 ついでに言うと、かつて西武鉄道は、深刻な「開かずの踏み切り」問題が生じていた区間に対し、「地下に別線を作る複々線化によって問題を解消する」と発表。その工事費にあたる分を、運賃値上げという形で先行して利用者から徴収していた。しかし、この計画は頓挫し、完全に白紙になった。さすがに運賃のほうは再値下げしたが、「開かずの踏み切り」は今でもそのまま。利用者は実現しない工事費だけ一時的に運賃で負担する、というオチになった。
 そのような会社の元会長が「三軍を導入して結果的には球団増」などと言っても信用はしにくい。だいたい、この話は「合意事項」ではない。仮に西武およびこの意見に賛同している読売がそれを導入したところで、残る「8球団」にとっては物理的に不可能なところもあるだろう。つまり、この話は言った人間の「実績」からしても、他球団との足並みからしても「ただ調子のいい事を言っただけ」に過ぎないのだ。

 10年前、「ドル箱の巨人戦」を求めて、読売オーナーと「新リーグ構想」をぶち挙げた事もあったオーナー氏だけに、この件において、読売の路線に協力するのは当然なので、さほど驚かなかった。一つ驚いたのはライオンズの合併を示唆した事くらいだったが、まあ、球団を買った頃に比べて野球に対する情熱が薄れたのか、本体のコクドの経営に問題があって、実は球団を手放したいくらい危なくなったのかのいずれかなのだろう。