プロ野球合併問題−
2004年7月7日のオーナー会議-2

2.読売オーナーの発言

2004/07/09

 さて、「本命」の読売オーナー氏である。ここ10年ほどプロ野球界を牛耳り、今回の「合併」も氏の承認が先にあった、という事を先日の週刊文春で暴言を炸裂させていた近鉄本社の山口社長も認めていた(まあ、認めなくても、誰にでもわかることだが)。
 その読売オーナー氏の会見だが、率直に言ってかなり違和感があった。これまで、FA・逆指名ドラフトなど、「とにかく資金力のある読売が得する制度」ばかり主張していた氏の事だから、今回の一リーグ化においても、それに準じる発言が出ると思っていたのだ。たとえば、「10球団総当りでやれば、一時的な相性などによる不確実性のある結果が減り、真に実力の高いチームが日本一になる」という感じである。

 ところが、そのような発言はなく、「1リーグの理念」と言えば、「合併して強力球団ができれば人気が出る」という程度。実際に「四番打者だけ合併」した「強力球団」の人気がどうなっているかを考えれば、冗談としか言いようのない発言である。
 しかもこれまた驚いた事に、「オールスターや日本シリーズの代替案」みたいな事まで言い出した。しかも、それがオーナー会議直後は「東西の上位球団で日本シリーズ」で、翌日は「リーグ終了後に東西に分けて、総当り戦をやり、その優勝者同士の勝者とリーグ優勝チームが『天皇杯』をやる」である。
 「そんな分かりにくい事するなら、2リーグでやればいいのでは?」と思うような「構想」である。だいたい、今期のパリーグのプレーオフの制度を「リーグ3位のチームが優勝したら、そことは日本シリーズをやらない」などと「批判」した氏が、なにゆえ「リーグ優勝した球団が日本一になれない制度」を言い出すのか理解不能である。
 記事のさわりだけ見たので、氏が具体的に何を考えているかわからない。ただ、これを見ただけだと、たとえばシーズンでダントツ最下位のチームでも、「東西総当り」で4勝1敗で通過して、次の決勝で2勝1敗だか3勝2敗だかすれば、「日本一決定戦」に出れる事になる。
 これに比べれば、「4位以下にはプレーオフ進出権のない今年のパリーグ」のほうが、まだ通常のペナントレースを尊重していると言えるのではなかろうか。それこそ「こんな東西リーグみたいな変な制度で下位のチームが出てきたら、読売球団がリーグ優勝した場合、『天皇杯』はボイコットする」とでも言い出しそうな制度である。
 まあ、あれだけ失敗しながら、いまだに「補強」の意味も分からないような輩に、「優勝チームを決める適切な手段」など分かるわけがない。ましてや、氏の自己矛盾はいつもの事なので、呆れこそすれ、驚きはしなかった。
 あと、この日の夜、話し合いを求める古田選手会長に対し、「たかが選手が、無礼だ」などと暴言を発したらしい。「所詮プロ野球などは自分が権力をふりかざすための存在」という氏の本音を如実に物語った一言と言えるだろう。それにしても、これでは「球界発展のため」などという建前を自ら否定するようなものだ(別にたいていの野球ファンは最初からそんな建前を信じてはいないが)。今に始まった事ではないが、「言って損する事を声高に言う」習性は、より一層際立ってしまっているようだ。

 話は戻るが、これまで「読売強化」という目標一筋に「球界改革」を続けてきた読売オーナー氏が、なんで今回は読売の成績に役立たない「1リーグ」を推進するのか理解しづらかった。「プロテクト枠」がどうこうと言っているところを見ると、合併球団から余った選手を取りたいのだろうが、既に読売球団は「四番」がダブついている状態である。また、本来の読売球団の強化に必要な「中継ぎ・抑え」だが、これだって、現在のFA・逆指名でも取れるところを、「四番コレクション」にかまけて取っていないだけで、その気になれば今の制度でも十分「補強」できる。
 というわけで不思議でならなかったが、ライオンズ・ホークスで球団代表を務めた坂井氏が9日付の日刊スポーツに書いたところによると「読売オーナーが全球団を自分のいいなりになるようにしたいための削減だ」との事だった。
 つまり、「球団経営に行き詰まった企業が、自分のいいなりになりそうのないライブドアのような企業に売られる危険性を、削減によって防ぐ」という事だろうか。もしそうだとすると、もはや読売球団のためですらなく、自分の権力を守るためだけの「1リーグ制」という事なのだろう。

 ただ、仮に1リーグ制になったとしても、果たして思惑通り行くのだろうか。この10年ほど氏は「権力」を持ち、それを使って自分のために制度を変えてきた。しかしそこでもたらされた結果は、望みどおりのものではなかった。
 次回は、この10年間の氏の「権力の行使」とそれが球界にもたらした結果および、読売球団にもたらした効果について書いてみたい。