折り畳みパイプ椅子の謎
2011/2/12
昨年末、とあるイベントに出展者として参加した。展示場所に行くと、机の上に一枚の紙が置いてあった。このイベントは、出展者に長机と折り畳みパイプ椅子が貸与され、出展が終わった人は、椅子を畳んで机の上に乗せて帰る、というのが長年の決まりとなっている。
そして、その紙には、「片付けるときに、椅子を机に立てかけず、机の上に乗せてください」という、当然の事が「要望」として書かれていた。
二十数年参加してきたが、このような紙を見るのは初めての事である。それだけ、ルールを守らず、パイプ椅子を机に立てかけて帰る人が増えた、という事だろう。
筆者が運営に携わっている別のイベントでも、これは毎回の問題となっている。こちらでは、参加者に椅子の搬出から収納までお願いしている。したがって、参加者は、朝来たときに、収納台車に入っている折り畳みパイプ椅子を出して開くわけだ。
ならば、片付けるときは、同じように収納台車に片付けるのが自然な行動としたものだろう。
ところが、不思議なことに、片付ける人は、ほんの数時間前の事をなぜか忘れしてしまう。そして、パイプ椅子を畳んでは、柱や壁に立てかけるのだ。中には、最初に書いたイベント同様、机に立てかける人もいる。
はっきり言って、この行為は何の役にも立っていない。収納台車には車がついているのだから、別に一箇所に椅子がまとまっている必要はない。ただ、車を動かして椅子のあるところに行き、そこで畳めばいいだけの話だ。
さらに言うと、無秩序に立てかけられているパイプ椅子を片付けるのは大変だ。その量が多くなればなるほど、「崩れる」というリスクが高くなる。はっきり言って、畳んで立てかけるよりも、何もしないで放置したほうが片付けやすい。
最初の頃、筆者は「立てかけないでくれ」とアナウンスいた。しかしながら状況が変わらなかった。そこで諦め、「椅子は触らず、他のものから片付けてくれ」とアナウンスするようになった。しかしながら、それを何度も言っても、状況に変化はない。
というわけで、「パイプ椅子を畳んで立てかける」という行為には、何の利点も存在しない。にも関わらず、なぜか人は、それを立てかけたがる。
特に冒頭に書いたイベントの場合、出展者に求められているのは三脚の椅子を畳んで机の上に置くだけである。それによって消費する労力は、ほとんど違いがない。
しかしながら、ついには「お願い」の紙がまわるほどまでに、規定に反して立てかける人が増えているわけだ。
もしかしたら、あの折り畳み椅子同士が支えあって(?)いる状態には、人間の美意識を刺激するなにかが内包されているのだろうか。それゆえ、人は規定や要望を無視してまで、立てかけたがるのかもしれない。
しかしながら、いかなる理由があったとしても、折りたたみ椅子を畳んで机・壁・柱に立てかける」という行為が極めて迷惑である事に変わりはない。被害に遭うのは年に数回の事ではあるが、これを辞めさせる事は、自分にとって重要な課題の一つとなっている。