8年ほど前、「MyYahoo!」ができてすぐくらいに、アカウントを登録した。したがって、英文字4文字というかなり短いアカウントでYahoo!メールのアドレスを作成できた。当時はまだ、「****@yahoo.co.jp」の****部分を自動生成してスパムメールを作成する、などという風潮のなかった時代だったので、そのようなアカウントにしたわけだ。
もっとも、当時はメーラーで読むこともできなかったため、この「フリーメールアドレス」はあまり使う機会はなかった。現在では、漫画喫茶などの出先から自分あてにメールする、という用途のみにYahoo!メールは使っている。
したがって、このアドレスにメールが届くことは基本的にない。厳密に言えば、前述したスパムメール作成システムにより何百通も届いているのだが、Yahoo!の対スパム自動廃棄システムにより、こちらが気づく前に捨てられているわけだが。
ところが、ある日MyYahoo!を見たら、「メール」のところに新着ありの表示があった。「珍しくスパム自動廃棄システムをかいくぐったのか、と思ったが、見てみると、「日本初・世界最大級のメルマガポータル」と称する有名メルマガ配信企業によるものだ。もちろん、Yahoo!のメルアドでそんなメルマガに登録した事などはない。
その文面は、以下のようなものだった。
Subject: ○○読者代理登録完了 (0000121654)
こんばんは、○○(※有名メルマガ配信企業名)です。
メールマガジンの登録確認メールです。
登録メールアドレスは
[※筆者のYahoo!メールアドレス] です。
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次のメールマガジンに、発行者によって代理登録されました。
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●メールマガジン名: ※いかにも胡散臭いインチキ商売系メルマガの題名
■代理登録とは?
メールマガジンの発行者が、読者登録の依頼や承諾があった人のメール
アドレスを、ご本人に代わって読者登録することです。例えば、
●読者登録してほしいと、メールマガジン発行者に直接依頼された場合。
●メールマガジン発行者が主催するアンケートに回答されたり、セミナーや
展示会に参加されて、メールマガジンへの読者登録に同意された場合。
●メールマガジン発行者が主催・運営する、懸賞、無料レポート配布、その他
無料サービス等で、利用条件としてメールマガジンへの読者登録が必須と
なっているものを利用された場合。
などによって発行者がメールアドレスを収集し、後日に代理登録することが
あります。代理登録にお心当たりがない場合は、過去に上記のような経緯で
読者登録を承諾したことをお忘れになっていないか、ご確認ください。
それでもなお、不審な点がある場合は、どのような経緯で代理登録された
ものであるか、発行者さまの問い合わせ先まで直接お問い合わせください。
発行者さまの問い合わせ先… info@***.com
(このメールに返信すると、発行者さま宛のメールになります。)
一応、このメルマガ配信企業は、日本でも最大手と言われるメルマガ配信企業だ。しかしながら、この文面はいったい何なのだろうか。
その「代理登録」とやらの条件には、Yahoo!メールのアドレスをオンライン・オフラインを通じてここ数年他人に伝えた事のない筆者には絶対にあてはまらない。にも関わらず、この文面は「お前はどこかで配信登録したはずなんだよ。心当たりがないとしたら忘れているだけだ」という視点でのみ書かれているのだ。
悪質な業者が自動生成により手当たり次第にYahoo!やHotmailのメルアドに送りつけたり、メルアド収集システムを使って、同意もなく送りつけている可能性をほぼ完全に否定しているわけだ。
さらにひどいのは、不審な点がある場合は、(中略)発行者さまの問い合わせ先まで直接お問い合わせください。(中略)(このメールに返信すると、発行者さま宛のメールになります。)という部分だ。
スパム対策の基本として、「スパムに返信してはいけない」というのがある。スパム業者は、自動生成や不正な手段で入手したメルアドリストに送信し、そこに「配信停止を希望する方は、こちらに」みたいな文面を入れておく。そこに「配信停止」をすれば、「生きているメルアド」になり、さらなるスパムを送りつける、という仕掛けになっているわけだ。
それを、このメルマガ配信企業は、その「生きたメルアド収集」の代行業務を行っているわけだ。それもわざわざ、「日本初・世界最大級のメルマガポータル」に送るつもりでそのメールに返信すると、インチキ業者にそれが届き、彼らの業務に役立つわけだ。
ここまで徹底して、「配信業者に有利に、送りつけられた側に不利に」の姿勢を取っているわけだ。日本一の発行総数を誇っているそうだが、確かにこれなら、インチキ業者が大挙してこの企業を使ってメルマガを送りつける事だろう。
一応、メールマガジンなどの送信には、受信者の同意を前提とする事になっているはずだ。その時点でこの「代理登録」なる仕組み自体既に問題があると思う。しかも、その仕組みをさらにインチキ業者が悪用しやすいように配慮しているわけだ。
大銀行がサラ金と組んで空前の利益を挙げたり、大手製造業が偽装請負を使って低賃金で若者を使い捨てでこき使ったり、サービス残業で未払い金を何億も払わされる時代だ。したがって「有名企業」でも平然とろくでもない事を行う、というのは重々承知してはいる。
とはいえ、「日本初・世界最大級のメルマガポータル」を名乗る会社が、何の関係のない人間にここまで露骨かつ不快なメールを送りつける、というのには、改めて呆れさせられた。